「聴力を保つにはどうすればいい?」「イヤホン難聴が心配」…名医が回答!
西横浜国際総合病院耳鼻咽喉科部長の河野敏朗先生(前編)
伊藤和弘=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年8月の回答者は「難聴」や「耳の疾患」に詳しい西横浜国際総合病院耳鼻咽喉科部長の河野敏朗先生です。
編集部 西横浜国際総合病院耳鼻咽喉科部長の河野敏朗先生は難聴や耳の疾患のスペシャリストとして知られ、日経Goodayでも「突発性難聴」の記事などにご登場いただいています。そんな河野先生に向けて、読者からの質問を募集したところ、たくさんの質問が寄せられました。それらに対する河野先生の回答を、前編・後編の2回に分けてお届けします!
加齢に伴う動脈硬化は難聴のリスクを高める
数年前から、健康診断で聴力を測ると右耳の高音が聞こえにくいことがあります。日常生活にはさほど困っていないのですが、難聴になったらイヤですし、難聴は認知症のリスクになるとも聞きます。どんなことをすれば聴力を保てますか? (50歳男性)
編集部 この方は高い音が聞こえにくいということですが…。
河野 昔から、お年寄りは耳が遠いことが知られているでしょう。これは加齢性難聴といって、年をとると高い音(高音域)が聞こえなくなっていくのです。この方は50歳と若いので、すぐに加齢性難聴になる可能性は低いと思いますが、気になるようでしたら耳鼻咽喉科を受診してみてください。また、年齢に伴う聴力の低下を抑えるには、早くから日常生活に注意した方がいいでしょう。
編集部 具体的には、どんなことに注意すればいいのですか?
河野 糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病。それからお酒とタバコが加齢性難聴のリスクになると言われています。これらに共通するのは動脈硬化を進めるということです。動脈硬化によって内耳や脳の血流障害が起こることが、難聴のリスクを高めると考えられているのです。タバコはやめる。お酒は減らす。生活習慣病にならないように、バランスの取れた食事と運動の習慣を持つことが大切です。また、日ごろからできるだけ大きな音を聞かないように心がけましょう。
編集部 認知症についてはいかがでしょうか。難聴は認知症のリスクを高くすることが知られていますね。2020年に「ランセットの認知症予防・介入・ケアに関する国際委員会」は「改善可能な認知症の12のリスク」を発表しましたが、その中にも「中年期(45~65歳)の難聴」が入っていました(表1)。

河野 そうですね。一般に、聞き取りにくくなると認知症のリスクが高まることが知られています。もし難聴になったら、認知症のリスクが高まるのを避けるためにも、積極的に補聴器を使いましょう。聞こえないまま過ごすよりも、聞こえを良くしたほうが認知症になりにくいとされています。
年齢から考えるとすぐに加齢性難聴になる可能性は低いと思われますが、リスクを減らすには、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病にならないような健康的な生活を送り、過度な飲酒とタバコは控えるようにしましょう。
編集部 動脈硬化は脳卒中や心筋梗塞だけでなく、加齢性難聴も起こしやすくするのですね。次は最近話題の「イヤホン難聴」についての質問です。