「毎日みがいても虫歯になる」「詰めものは『金』がいい?」歯科医が回答!
「歯や口のケア」に詳しい歯科医師・歯学博士の照山裕子先生(後編)
松澤ゆかり=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2022年7月の回答者は、歯や口のケアに詳しい歯科医師・歯学博士の照山裕子先生です。

歯や口のケアに詳しい照山裕子先生 Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
Q10
Q11
Q12
Q13
Q14
編集部 歯科医師で歯学博士の照山裕子先生に、読者からの質問に答えていただく「健康Q&A」。前回は、矯正や、洗口液、治りにくい歯周病などについて答えていただきました。最終回となる今回は、歯の詰めものや入れ歯、いい歯医者の選び方などについてお答えいただきます。
照山 よろしくお願いいたします。
編集部 ではさっそく、最初の質問です。
歯の詰めものは「金」がいいの?
60年以上前に治療した前歯が、「アマルガム」を使ったためか黒ずんでいます。脱色できると歯医者に言われましたが、高齢になり歯ももろくなっているので、そのまま「金」をかぶせたほうがよいのではと思っています。(71歳、男性)
編集部 歯を治療する素材にはいろいろな種類がありますが、60年前に使用された「アマルガム」とはどのようなものですか。
照山 アマルガムとは、虫歯によってできた穴に直接詰める歯科材料です。水銀とほかの金属(銀・銅・スズなど)の粉末からなる合金で、歯科医師が詰める直前にその都度混ぜ合わせて使用していました。最初は柔らかいのですが、詰め終わると硬くなる性質を持っているため操作性が良く、150年ほどの歴史がありました。一方、現在でも一般的に用いられている「銀歯」と呼ばれるものは「金銀パラジウム合金」で、金・銀・パラジウム・銅・インジウムなどが含まれています。
充填されたアマルガムに含まれる水銀が溶けて健康被害につながる危険性が指摘されたことがあるのですが、合金になると化学的には安定しており、人体に悪影響を及ぼすことはありません。しかし水銀自体を廃絶しようという動きが世界中にあったため、歯科の世界でもアマルガムを使わなくなりました(2016年からは保険適用外)。アマルガムは時間がたつと黒ずんできますが、これは金属の酸化によるものです。
編集部 相談者の方は、アマルガムを詰めて60年以上経っているそうです。