「鼻水が出て困る」「失われた嗅覚」読者の悩みに名医が回答!
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則先生(後編)
伊藤和弘=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
今月の回答者は耳鼻咽喉科のエキスパートとして知られるJCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則先生です。鼻に関する悩みや疑問について聞きました。
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則先生 Q&A
Q 1
Q 2
鼻からクサいにおいがすると言われました。蓄膿症以外にどんな原因が考えられますか?(前編)
Q 3
花粉症などのアレルギーはないのですが、黄砂が飛ぶ日は鼻づまりがひどくなります。(前編)
Q 4
「ストナリニS」と「アレジオン」は併用しても大丈夫ですか?(前編)
Q 5
鼻うがいをしていたら耳に水が入ってしまったようです。(前編)
Q 6
鼻中隔弯曲症の手術ができない年齢や条件はありますか?(前編)
Q 7
Q 8
起床直後やシャワーを浴びた後などに大量の鼻水が出て困っています。
Q 9
Q10
毎日のどの奥から鼻血が出るのですが、病気の可能性はありますか?
Q11
Q12

編集部 前編は、いびき対策や鼻からのにおいについて、石井先生にお聞きしました。後編は、起床直後に出る鼻水や蓄膿症(慢性副鼻腔炎)などの相談にお答えいただきます。ではさっそく、最初の質問です。
気になる後鼻漏を治すには?
後鼻漏で長年悩んでいます。耳鼻科にも通っているのですが、なかなか治りません。(72歳男性)
編集部 後鼻漏というのは鼻水がのどに流れ込んでくることですね。
石井 はい。誤解している方も多いのですが、後鼻漏は実は病気ではありません。後鼻漏は誰にでもある症状です。鼻水は1日に1.5L、花粉症の時期だと2Lくらい出ます。のどや気管をうるおすために必要なものだからです。そんなに大量に出てくる鼻水を放っておいたら鼻からあふれてくるでしょう。唾液と一緒で、多くの人は意識することなく飲み込んでいるわけです。
編集部 そうだったんですか!
石井 だから、気にせずに飲み込んでおけばいい。それを気にしてペッペッと吐いていると、新たに作られる鼻水の水分が足りなくなって粘り気が出てきます。すると、のどに引っかかるのでますます気になって吐き出す。ますます粘り気が出る、という悪循環に陥ってしまいます。
花粉症や家のホコリ(ハウスダスト)のアレルギー性鼻炎のある方は、下鼻甲介(かびこうかい、鼻腔内の骨の隆起の1つ)の後ろが腫れ上がり、のどにたれ込む量が多く、せき込みも多くなることがあります。呼吸器内科でせきぜんそくや気管支ぜんそくではない場合は、ステロイド点鼻薬が効果的です。医師の診断による処方が必要です。下鼻甲介粘膜を内視鏡下で手術的に処置する方法もあります。
編集部 気になる人はどうすればいいでしょうか?
石井 できるだけ吐かず、とにかく「飲み込む」ことです。水分をとることも大事なので、粘り気が気になったらお茶と一緒に飲み込めばいいでしょう。
例外は吐き出した後鼻漏が緑色をしている場合。これは膿の色で、すなわち蓄膿症になっているので治療が必要です。そうでなければ、多少粘り気があっても気にする必要はありません。特にこれから夏場なので水分をたくさんとる必要があるでしょう。この方のように高齢になると腎臓での水分の再吸収が減ってくるので、水分補給はより大切になってきます。
せき込みが多く、花粉症やハウスダストによるアレルギー性鼻炎がある場合は、ステロイド点鼻薬や手術も効果があるときがあります。
後鼻漏は誰でもあることなので、多少粘り気があっても構わずにどんどん飲み込みましょう。ただし、鼻水が緑色をしている場合は慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の可能性が高いので耳鼻咽喉科を受診してください。後鼻漏によるせき込みが多いときは呼吸器内科でせきぜんそくや気管支ぜんそくが無いかどうかをチェックしてもらい、それらが無ければ、ステロイド点鼻療法や内視鏡下鼻腔手術がせき込みを減らす効果を示すことがあります。
編集部 なるほど、後鼻漏は気にしなければいいんですね。せき込みを伴う後鼻漏であれば、呼吸器内科でぜんそくのチェックをしてもらい、点鼻薬や手術によって効果があるかもしれないのですね。では、次の質問です。