「歯石は自分で取れる?」「歯肉退縮は治らない?」歯科医が回答!
「歯や口のケア」に詳しい歯科医師・歯学博士の照山裕子先生(前編)
松澤ゆかり=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2022年7月の回答者は、歯や口のケアに詳しい歯科医師・歯学博士の照山裕子先生です。

歯や口のケアに詳しい照山裕子先生 Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
Q10
Q11
Q12
Q13
Q14
編集部 歯科医師で歯学博士の照山裕子先生は、世界でも専門家が少ない「顎顔面補綴(がくがんめんほてつ)」を専攻し、現在は歯科クリニックで治療を行うとともに、執筆やメディア出演などでも活躍されています。読者のみなさんから照山先生に、たくさんの質問をいただきましたので、全部で3回に分けてご回答いただきます。
照山 よろしくお願いいたします。
編集部 ではさっそく、最初の質問です。
歯石は自分で取ってもいい?
歯石を自分で取る「スケーラー」がネットで販売されています。歯石は自分で取ってもいいものでしょうか? 歯ぐきを傷つけそうで心配です。(53歳、女性)
編集部 歯石は、毎日歯みがきをしていてもできるものなのですね。
照山 きちんと歯みがきをしているつもりでも、口の中にはみがき残しが出てしまいます。みがき残しが出やすい場所は、歯の裏側や歯と歯の隙間などです。歯に付着した食べかすをエサに細菌が増殖し、互いに結びついて粘着性を持つ塊になります。これが「バイオフイルム」です。このバイオフイルムに唾液中のミネラル成分などが作用すると2~3日後には石灰化します。これが「歯石」で、唾液腺の開口部である下の前歯の裏側、上の奥歯の外側(頬側)などができやすい場所です。
歯石は石灰化しているため、一度付いてしまうと、落とそうとしても歯ブラシでは取り除けなくなります。
編集部 「スケーラー」とは、どんな器具ですか?

照山 スケーラーは歯石を除去する器具の総称で、代表的なものは2種類あります。一つは、専用の機械に装着して歯石を粉砕させる「超音波スケーラー」で、もう一つは手で歯石を削り取る「ハンドスケーラー」です。ハンドスケーラーは、持ち手の先にフックのような形の金属の刃がついており、歯の角度や動かし方に合わせてさまざまな種類があります。ネット通販やドラッグストア、100円ショップなどでもシンプルな形のものが販売されているようですが、一般の方がセルフケアで使うのは大変危険な行為です。
編集部 一般の人がハンドスケーラーを使って歯石を取るのは難しいのですね。
照山 セルフケアでハンドスケーラーを使う場合、自分で鏡を見ながら刃先で歯石を削っていくことになると思われますが、歯石が取れるのは目に見える部分の歯石だけ。歯の根元の部分や、歯ぐきに覆われている部分の歯石は、自分では取るのが難しくなります。歯石を取るときの力加減がわからずに、歯ぐきを痛めたり、場合によっては歯の表面のエナメル質を傷つけてしまうことも。ですから、自分で歯石を取るのは、絶対にやめたほうがいいでしょう。