「コレステロールの薬の効果は?」「一生飲まないとダメ?」名医が回答
千葉大学大学院教授の横手幸太郎先生(後編)
伊藤和弘=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年6月の回答者は「コレステロール」や「中性脂肪」に詳しい、千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学教授の横手幸太郎先生です。
千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学教授 横手幸太郎先生Q&A
Q 1
LDLコレステロールだけが高くても治療が必要でしょうか?(前編)
Q 2
LDL、HDL、中性脂肪のうち、一番気をつけなければいけないものは?(前編)
Q 3
「small dense(スモールデンス)LDL」「non-HDL」とは何ですか?(前編)
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
食事と運動以外で、内臓脂肪を減らす方法を教えてください。(中編)
Q 8
Q 9
Q10
Q11
薬でコレステロール値を低くすると、本当に心筋梗塞を防げるのですか?
Q12
Q13
編集部 後編は「コレステロールの薬」に関する質問から入ります。薬の効果や、一生飲み続けなければいけないかどうかなど、気になる方は多いようです。
一生薬を飲み続けることに抵抗が…
LDLコレステロールが年々上昇し、最新の健診結果では200mg/dL近くになりました。そろそろ薬を飲んだ方がいいでしょうか? コレステロールの薬はいったん飲み始めると一生飲み続けないといけないと聞き、二の足を踏んでいます。 (52歳男性)
横手 これまで話してきたように、中性脂肪と違ってLDLコレステロールは生活習慣だけで下がりにくいので、食事や運動をがんばっても下がらないということはあり得ます。そこで薬を飲むべきかどうかは、その人の動脈硬化の危険度がどれくらいあるかによっても変わってきます。もしその人がもっとコレステロール値を下げるべきで、食事・運動だけでは下がらない場合は、薬を飲むべきだと思います。心筋梗塞を起こしてからでは遅いですからね。
例えば、若い頃からLDLコレステロールが200mgなど高い数値だった場合、遺伝性の家族性高コレステロール血症の可能性が高いと思われます。その場合はしっかり薬を飲んで下げなければいけません。一方、この方のように「年々上昇している」ということは、何か加齢以外に理由がある可能性があります。動物性脂肪やコレステロールの多い食事をするようになった、太ってきた、といったことに心当たりがあるようなら、そうした「原因」を解消できれば数値が下がる可能性はあります。ただ、200mg/dLというのはとても高いので、やはり何らかの手を打った方がいいと思います。
編集部 この方のように「コレステロールを下げる薬は一生飲み続けなくてはいけない」ことに抵抗を感じる人も少なくありませんね。

横手 生活習慣を改善しても下がらなければ、薬を飲んで下げる。これが基本です。もし薬を飲む以外にコレステロール値を下げる努力をほかにしないとしたら、そのまま一生飲み続けなければいけません。薬をやめたらまた上がってきますから。ですが、薬を飲みながら、コレステロールが上がる原因を見つけて解消できれば、薬をやめても低い状態をキープできる可能性はあります。
編集部 実際にそうやって薬をやめられる人もいるのでしょうか?
横手 いますよ。ですから、まず薬を飲んで、さらに生活習慣を見直してみましょう。それで順調に下がってきたら、いったん薬をやめて様子を見てもいいかもしれません。薬を飲むだけでなく、生活習慣の改善を並行して進めることはとても大切です。
LDLコレステロールが200mg/dL近くもあれば、心筋梗塞や脳卒中にならないように薬を飲んだ方がいいでしょう。薬を飲みながらLDLコレステロールが上がる原因を見つけ、それを解消できれば、途中で薬をやめることもできます。
編集部 必ずしも一生飲み続けなくてはいけないとは限らないということですね。分かりました。次も同じく、薬についての質問です。