「ヨーグルトと免疫の関係は?」「免疫力を高める食事を知りたい」専門家が回答
医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純先生(中編)
堀田恵美=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2022年5月の回答者は、医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センター センター長の國澤純先生です。
編集部 免疫のエキスパートである医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純先生に、読者からの質問に答えていただく「健康Q&A」の中編です。最初は免疫力を高める食事についてのご質問です。
免疫力を高める食事を知りたい
免疫力を高めるには、どのような食事がいいのでしょうか。具体的に知りたいです。(44歳男性)
編集部 免疫力を高める食事についての質問です。前編ではバランスが大事とうかがいましたが、具体的に免疫と関係する栄養成分などについてどれくらい分かっているのでしょうか。
國澤 はい。われわれの研究では、ビタミンB1が不足すると胸腺などの免疫組織が小さくなることを確認しています(*1)。ビタミンB1は豚肉や大豆、玄米などに多く含まれていますね。マウスをビタミンB1不足のエサで飼育すると、3週間ほどで胸腺の大きさが10分の1くらいになってしまいました。そう考えると、たった1種類の栄養素が短期間不足するだけでも免疫はボロボロになるのだと想像がつきます。
ほかにもビタミンAや葉酸(ビタミンB9)の不足も免疫に影響すると考えられています。ビタミンAは「腸の免疫を維持するのに大事」と言われるのをご存じですか? 免疫細胞は、教育を受けた部位に戻ってきやすい性質を持っています。腸で教育を受けた免疫細胞は、腸から入ってくる病原体に対する教育を受けているので機能しやすい。そのため、腸に戻ってくるようにタグ付けされるというわけです。
この現象は「ホーミング」と呼ばれるのですが、このホーミングに必要なタグ付けに働くのがビタミンAです(*2)。なかなか私たちの生活では実感しにくいですが、発展途上国などでは下痢症状や腸管感染症で亡くなる方が多く、その理由がビタミンA欠乏にあるのではと考えられています。
一方、葉酸は動物試験レベルですが、免疫の暴走を抑えるTregと呼ばれる免疫細胞の維持に重要ということが分かっています(*3)。
編集部 ビタミンAはニンジンやカボチャなどに含まれるβカロテンから作られますね。レバーやウナギなどにもビタミンAや葉酸が多く含まれます。このほか、イワシやサケ、マイタケやキクラゲなどのキノコに多く含まれるビタミンDが免疫にいいとよく聞きますが・・・
國澤 ビタミンDは古くから免疫維持に大事と言われている成分で、免疫細胞の活性化作用があると言われています。新型コロナにおいても血液中のビタミンD濃度と重症化や死亡率との関連データが出ていたと思います(*4)。日に当たれば体内で作られますが、食事などでとっておいて悪いことはないと思います。

気をつけたいのは、いくら「免疫機能の維持にいい」栄養素を含むからといって、特定の食材だけをたくさん食べるといった食べ方はしないほうがいいということ。特定のものばかりを食べていては他の栄養素が不足するなど、食事バランスが偏りやすくなります。そうすると、免疫力が上がるどころかかえって低下してしまうリスクが大きいでしょう。
免疫機能の維持には、ビタミンB1やビタミンA、ビタミンDなどが不足しないようにすることが役立ちます。ただし特定の食品ばかりを集中して食べるのでなく、バランスよく食べることが重要です。
*2 Nat Med. 2004 Dec;10(12):1300-1./ Immunity. 2004 Oct;21(4):458-60.
*3 J Immunol. 2012 Sep 15;189(6):2869-78.
*4 PLoS One. 2022 Feb 3;17(2):e0263069.
編集部 ありがとうございます。次はヨーグルトについての質問です。