「ゴルフの前日になかなか寝つけず…」読者の悩みに名医が回答!
睡眠のエキスパート・日本大学医学部精神医学系主任教授・内山真先生(後編)
伊藤和弘=フリーランスライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者など、健康・医療のエキスパートが月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
今月の回答者は、日本睡眠学会の理事長で、睡眠に関する記事でGooday読者にもおなじみ、日本大学医学部精神医学系主任教授の内山真先生です。今回は、イベントの前の晩に寝つけないという悩みや、睡眠薬についての相談に答えていただきました。
日本大学医学部精神医学系主任教授・内山真先生 Q&A
Q 1 朝までに2、3回は目が覚めます。なぜでしょうか?(前編)
Q 2 毎日の睡眠時間は5~6時間ですが、大丈夫でしょうか?(前編)

編集部 前編では、中途覚醒に悩む人や、なかなか寝つけないで悩んでいる人の対策を睡眠のエキスパート・内山真先生にお伺いしました。
後編では、ゴルフや旅行などのイベントの前の晩に寝つけないという悩みや、睡眠薬についての相談にお答えいただきます。では、さっそく最初の質問です。
早く起きたいので、早くベッドに入ったのに眠れない!
普段は寝つきがいいのですが、久しぶりのゴルフの前日などはなかなか寝つけず、困っています。早く起きなければいけないので普段より早く床に入るのですが、まったく眠れず、明け方まで悶々とすることも珍しくありません。 (80代男性)
編集部 翌朝はいつもより早く起きなくてはいけないので早くベッドに入るのに、興奮のせいか少しも眠れない。これは多くの方が経験していることだと思います。
内山 何時でも布団に入ったら眠れる、と考えるのは大きな間違いです。たとえ徹夜をして睡眠不足になっていても、人間には「眠れない時間帯」というものがあります。普段眠る時間よりも「2~3時間前」が一番目が冴(さ)えて眠れないのです。この時間帯にベッドに入ると、疲れていてもなかなか眠ることはできません。なかなか寝つけないし、中途覚醒も起こりやすくなります。つまり、ますます不眠がひどくなります。
編集部 なるほど、言われてみれば思い当たります。でもそういう場合、翌日は旅行やゴルフといったイベントが待っていることが多いわけで、できれば睡眠時間を削りたくないですよね。
内山 気持ちは分かりますが、早く起きなくてはいけないからといって、普段は12時に寝ている人が9時から眠ろうと思っても無理なんです。眠くないのに床に入らないほうがいい。多少、朝がつらいのは仕方ありません。万全な体調でゴルフがしたいのなら、1週間くらいかけて早起きの準備をしていくべきです。
歳をとってくると腰が悪い人、ひざが悪い人も多くなる。だから身体を休ませる時間が必要になります。夜になって横になって休むと楽になるわけです。だけど、「それならいっそのこと横になるついでに早く寝てしまおう」と思うと、先ほどの眠りにくい時間帯に当たってしまい眠れない。横になって体を休めるのはいいですけど、自然に眠くなる時間までは部屋を明るくして何かしているほうがいいです。
よく眠れなくなると、早くから眠ろうとして、眠たくないのに早い時刻からベッドに入るようになりがちです。しかし、こうするとますます寝つくのが困難になり、焦った気持ちも増して、さらに頭がさえて眠りにくいという悪循環に陥る人も多くいます。こうして、早くからベッドに入ると、一晩に寝床で過ごす時間も長くなってしまう。繰り返しになりますが、健康な人の睡眠時間は45歳で6時間半、65歳で6時間程度です。目覚まし時計が鳴ったとき、「もう少し眠りたい」と思うくらいがちょうどいい。人生で最も元気だった20~30代のころを振り返っても、毎朝「よく眠った!」と満足して生活していた人はいないはずです(笑)。
普段の就寝時刻よりも2~3時間前は一番眠りにくい時間帯です。翌日早起きしなくてはいけないからといって、無理に早く寝ようと思っても眠れません。睡眠不足を避けたければ、1週間くらいかけて早起きを励行し準備することが必要です。こうして苦労するより、例えば、ゴルフに行くのだったら、勝ち負けは忘れて当日楽しむことを考えた方がいいかもしれません。
編集部 よく分かりました。続いては、10代の息子さんを持つお母さんのお悩みです。