「胃酸の逆流が治まらない」「ピロリ菌除菌後の内視鏡検査は?」名医が回答
東海大学医学部内科学系消化器内科学領域主任教授の鈴木秀和先生(後編)
堀田恵美=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年4月の回答者は、胃腸の病気の診断・治療に詳しい、東海大学医学部内科学系消化器内科学領域主任教授で東海大学医学部付属病院消化器内科診療科長の鈴木秀和先生です。
東海大学医学部内科学系消化器内科学領域主任教授 鈴木秀和先生 Q&A
Q 1
年を取ったら脂っぽい食事はNG? 胃薬でしのげば問題ない?(前編)
Q 2
Q 3
お酒の前に牛乳を飲むと酔いにくくなるというのは本当?(前編)
Q 4
Q 5
Q 6
Q 7
ピロリ菌除菌後は、内視鏡検査をどのくらいの頻度で受けるべき?
Q 8
Q 9
Q10
Q11
編集部 今回は、東海大学医学部内科学系消化器内科学領域主任教授の鈴木秀和先生に胃の不調について伺っています。後編は、ピロリ菌除菌後の検査についての質問からです。よろしくお願いいたします。
鈴木 はい。よろしくお願いします。
ピロリ菌除菌後は、内視鏡検査をどのくらいの頻度で受けるべき?
しばらく前にピロリ菌を除菌し、その後の内視鏡検査で、胃炎はあるものの大丈夫でしょうと言われました。今後はどのくらいの頻度で内視鏡検査を受ければいいですか。(50歳、男性)
編集部 同様の質問を複数の方からいただいています。
鈴木 既にピロリ菌の除菌を済ませた方ですね。まず、ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)感染症について説明しておきましょう。ピロリ菌に感染するのは多くは子どもの頃だけといわれ、主に食べ物の口移しや食器の共有などで親から感染するのだろうと考えられています。ピロリ菌は、感染すると胃の粘液内に定着し、胃粘膜に炎症(萎縮性胃炎)や潰瘍を生じさせます。そのまま放っておくと胃がんにもつながることから、感染が分かったら早めに除菌するのが好ましいとされています。
この方は、どれくらい前に除菌したかについては言及されていないですが、実は、何歳の時に除菌をしたかというのが重要なポイントになります。
編集部 除菌のタイミングが重要なのですか?
鈴木 はい。萎縮性胃炎がさほど進行していない20~30代の若い頃に除菌をしておけば、胃がピロリ菌の毒素にさらされる期間が短いため、萎縮性胃炎などの程度は軽く、その後にがん化する心配もさほどありません。しかし、50~60代になってから除菌すると、ピロリ菌に感染していた期間が長い分、萎縮性胃炎も進行しているはず。除菌後であっても胃がんを発症するリスクが高くなります。
編集部 除菌後の検査はどういったものを、どれくらいの頻度で行えばいいでしょうか?
鈴木 若くて胃炎の程度が軽い人の場合は、除菌後4~5年は1年置きに内視鏡で胃の状態をチェックし、特に問題がないようであれば、その後は2~3年に1度検査を受けるのでいいでしょう。
50歳を超えて除菌した場合、既に胃がんの発生しやすい年齢に達しているので、念のため、除菌から5年くらいは毎年検査を行ってください。その後問題ないようであれば、主治医と相談の上で2~3年置きに検査すればいいでしょう。
