「痛いところは温めるべき?」「頭痛や肩こりの対策は?」名医が回答!
痛みに詳しい横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科部長の北原雅樹先生(前編)
堀田恵美=ライター
「健康Q&A」では、医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2022年3月の回答者は「難治性の慢性痛」に詳しい、横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科部長の北原雅樹先生です。
痛み治療のエキスパート 横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科部長の北原雅樹先生Q&A
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編集部 横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科部長の北原雅樹先生は、世界初の痛み治療センターである米国ワシントン州立ワシントン大学ペインセンターで学ばれた、日本の痛み治療の第一人者です。
そんな北原先生に、読者からの質問を募集したところ、実に多くの質問が寄せられました。それに対する北原先生の回答を、前編・中編・後編の3回に分けてお届けします。ではさっそく、最初の質問です。
慢性痛にはストレッチや運動が不可欠
痛みを抑えるのに、温めたり、入浴したりしたほうがいいのでしょうか? ストレッチや運動などはどうですか。(55歳 男性)
編集部 痛みを和らげる方法についての質問です。こちらの方は、ご自身が慢性的な痛みで悩んでいるのか、それとも一般論として痛み対策に効果が期待できる方法を知りたいのか、質問内容からははっきりしませんが、一般的に、痛いところを温めることはよさそうに思います。どうでしょうか?
北原 温めたり入浴するのは、こわばった筋肉を柔らかくしたり、リラックスしたりできるのでやってみて気持ちいいと感じるのであれば温めるといいでしょう。ただ、中には温めるのが嫌だという人や、神経痛(神経障害痛)の人で、温かいと痛みを感じ、冷やしたほうが痛みが治まるという人もいます。自分が気持ちいいと思う方法を選びましょう。
ただし、温めたり、マッサージでほぐしたりするのは、一時的な痛みの対策としてはいいと思いますが、3カ月以上続く「慢性痛」であれば根本的な解決にはなりません。例えば、「雪かきをしたら翌日から肩が痛くなって2週間続いています。どうしましょう」というのであれば、慣れない作業で筋肉がこってしまったのが原因だと思われるので、マッサージでほぐせばいい。ところが、「10年前からずっと肩が痛いです」と言われたら、マッサージするだけではダメですよね。なぜ10年前から痛いのかを考えなくてはなりません。
質問者の方の痛みが慢性痛(3カ月以上続く痛み)なのかどうかはわかりませんが、慢性痛の場合は、ストレッチや筋トレなどの運動はお勧めです。慢性的に痛みがあるということは、体が悲鳴を上げているということ。その背景には、必ずと言っていいほど運動不足や普段の生活習慣があります。慢性痛というのは基本的には「生活習慣病」なのです。
編集部 どのような生活習慣が痛みを引き起こすのでしょうか。
北原 痛みを引き起こすようになった根本の部分には、運動不足による筋力の低下や、歩き方、荷物の持ち方などのクセ、飲酒や喫煙などの生活習慣が関係します。歩きスマホもよくありません。
そのため、慢性痛を訴える患者さんの初診時には、何歳か、どんな体格か、男性か女性か、どんな仕事をしているのか、お酒は? 食べ物は? 運動は?……ということを細かく聞いて、痛みを引き起こす原因を突き止めていきます。
編集部 なるほど、日々の生活の細かなところからチェックしていって、その人の生活の中から痛みの原因を突き止めていくのですね。そうして浮かび上がった、痛みの原因と考えられる生活習慣を改善することが、慢性痛の解消には必要で、多くの場合、運動やストレッチは不可欠なわけですね。
温めるほうがよいか、冷やしたほうがよいかは人によって異なります。気持ちいいと思うほうを実践するといいでしょう。慢性痛対策であれば、運動やストレッチも不可欠です。
編集部 引き続き、次の質問に行きましょう。