「テレビで見た『血糖値スパイク』が気になって…」読者の悩みに名医が回答!
ロカボ提唱者、北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長 山田悟先生(前編)
柳本 操=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者など、健康・医療のエキスパートが月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
今月の回答者は、「“ロカボ”山田悟の糖質制限の誤解」連載で日経Gooday読者にもおなじみの、北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長、食・楽・健康協会代表理事の山田悟先生です。
編集部 山田悟先生は、緩やかな糖質制限である「ロカボ」の提唱者で、日経Goodayの連載「“ロカボ”山田悟の糖質制限の誤解」でも、全19回にわたってロカボについて分かりやすく伝えていただきました。
そんな山田先生に向けて、Gooday読者に質問を募集したところ、たくさんの質問が寄せられました。山田先生の回答を今回と次回の前後編に分けてお届けします!

山田 よろしくお願いします。
編集部 ではさっそく、最初の質問です。
検査値が正常範囲内でも「食後高血糖」の可能性が
健診の血糖値は問題ないのですが(糖代謝の項目はA判定)、じわじわと血糖値が上がっているのが気になっています。ここ3年は、空腹時血糖値が84→87→90mg/dL、HbA1cは5.2→5.4→5.5%です。どのぐらいになったら、気をつければいいですか?(40代男性)
編集部 この方のように、「今は異常値とは言われず、大丈夫だと言われているけれど、徐々に数値が悪化しているように見える」ために、この先どうなるのか不安、と感じている人はかなり多いのではないかと思います。
山田 この方は、空腹時血糖値は完全に正常範囲内にあります。ただ、厚生労働省が定める基準値から捉えると、HbA1cの値がぎりぎりのレベルに近づいています(*1)。ことによると、「食後高血糖」が起こっている可能性があります。食後の血糖値をチェックされることをお勧めします。
編集部 「食後高血糖」は、食後の血糖値の上昇幅が極端に大きい場合のことですよね。「血糖値スパイク」というキーワードでも取り上げられ、話題になりました。健診のときに測るのは空腹時に計測する「空腹時血糖値」ですから、食後高血糖になっているかは分からないわけですね。
山田 そうです。健康な人であれば、食後2時間もすればインスリンの働きによって血糖値は元通りに低下しますが、インスリンの分泌量が少なかったり、分泌する速度が遅かったりして、血糖値を下げる働きが十分でないと、食後2時間以上たっても血糖値が下がりません。食後2時間の血糖値が140mg/dL以上になると、「食後高血糖」と判断されます。
編集部 糖尿病の診断基準を満たしていなくても、「食後高血糖」が存在すると心血管疾患による死亡リスクが高くなることが国内のコホート研究で明らかになっていることは連載でも紹介しました(詳しくは連載の第5回を参照)。
山田 食後高血糖の人は、食後に血糖値が異常な数値まで上がり、その後に下がるといった具合に、乱高下するようになります。
この上下動がとても危険で、突然死とも関わる動脈硬化を進行させたり、体内で炎症を進行したりすることが分かってきています。
食後高血糖は、空腹時血糖値に異常が出るはるか前から生じることが知られています。空腹時血糖値に異常が出てしまったら、糖尿病の発症は目前です。それよりも前段階で気づいてほしいと常々考えています。ですから質問者の方のように、「数値がじわじわ悪化していること」に不安を感じていただいたら、食後高血糖でないかをチェックしていただきたいと思います。
血糖値がじわじわ上昇して基準値に近づいてきたら、食後高血糖の可能性があります。食後高血糖のチェックをお勧めします。
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