「薬を使わず尿酸値を下げたい」「痛風になる人とならない人の違いは?」名医が回答!
国立病院機構米子医療センター特命副院長の久留一郎先生(前編)
伊藤和弘=ライター
「健康Q&A」では、医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2022年2月の回答者は「痛風」や「尿酸値」に詳しい、国立病院機構米子医療センター特命副院長の久留一郎先生です。
国立病院機構米子医療センター特命副院長 久留一郎先生Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
Q 4
Q 5
尿酸値が高い人にお勧めの運動は? 筋トレやマラソンは良くない?
Q 6
Q 7
Q 8
Q 9
尿酸値を薬で下げて安定しています。いつやめられますか?(後編)
Q10

編集部 国立病院機構米子医療センター特命副院長で鳥取大学医学部ゲノム再生医学講座再生医療学分野特任教授でもある久留一郎先生は、痛風や尿酸値のエキスパートとして知られ、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』の改訂委員長も務められました。日経Goodayでも高尿酸血症の特集などにご登場いただいています。
そんな久留先生に向けて、読者からの質問を募集したところ、実に多くの質問が寄せられました。それに対する久留先生の回答を、前編・後編の2回に分けてお届けします。ではさっそく、最初の質問です。
尿酸値が9mg/dLを超えたが、薬を飲まずに尿酸値を下げたい
尿酸値が9mg/dLを超え、専門医を受診するように産業医から勧められています。肥満でもなく、酒量もそれほど多くありません(週2~3回、ビール1本程度)。できれば通院せずに改善させたいのですが、アドバイスをいただけないでしょうか。(57歳男性)
編集部 尿酸値が7mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断されますが、成人男性の2~3割もの人が当てはまるそうですね。しかし高血圧や脂質異常症と同じく自覚症状がまったくないため、受診せずに放置している人が多いようです。

久留 高尿酸血症の中でも、尿酸値が9mg/dL以上になると5年以内に30%以上が痛風を起こします。そのため『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』では、尿酸値が9mg/dL以上になったら薬物治療の対象としています。ですから、産業医の先生のアドバイスは当然のことです。ただ、この方は薬を飲みたくないということなので、ひとまずそれ以外の方法で尿酸値を下げる努力をしてみましょう。
最初にお酒です。この方の酒量は多くありませんが、ビールをよく飲んでいるようですね。ビールには尿酸の材料になるプリン体がかなり入っています。これを発泡酒に替えると3分の1くらいに減らせます。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒にはプリン体が入っていませんから、尿酸値を上げないためには蒸留酒のほうがいいですね。
次に食事。プリン体がたくさん入っているものを食べると体内で尿酸の合成が促進され、尿酸値が上がります。レバー、ハム、ベーコン、エビ、白子など、プリン体の多い食品をとりすぎていないか注意してください。一方、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品をとると尿酸値が下がりやすいことも分かっています。乳製品には尿酸を排泄し、プリン体の吸収を抑える作用があるのです。
尿酸は尿から排泄されるので、しっかり水分を摂取して尿をたくさん出すと、尿酸値が下がってきます。1日2000mL(2リットル)の尿量が必要と言われていますので、1日500mLくらい余分に水やお茶を飲むことを心がけるといいでしょう。
ストレス管理も大切です。ストレスが高い人は尿酸値が上がってしまいます。なぜかというと、まず、ストレスは肝臓で尿酸を作るキサンチン酸化還元酵素を活性化してしまうので、尿酸がどんどんできてしまいます。次に、ストレスは腎臓の血管にも作用します。そのため尿酸が尿と一緒に排泄されにくくなるのです。この2つの作用によって尿酸値が上がります。ストレスを抱えている自覚のある方は、スポーツや趣味など、ストレスを減らすようなことを実行してください。生活習慣としては、だいたいそんなところでしょうか。
編集部 それらをすべて実行すれば尿酸値が下がるのですね?