「冬になると心臓が痛い」「心電図に異常はないが、不整脈かも…」名医が回答
北里大学北里研究所病院循環器内科部長の猪又孝元先生(中編)
梅方久仁子=ライター
「健康Q&A」では、日経Goodayの連載や特集でおなじみの医師や研究者、アスリート、トレーナーなど、健康・医療のエキスパートの方々が月替わりで登場。あなたの疑問やお悩みに答えます。
2021年1月の回答者は、心不全のスペシャリストであり、心臓の病気全般に詳しい、北里大学北里研究所病院循環器内科部長の猪又孝元先生です。今回は中編をお届けします。
心臓に詳しい北里大学北里研究所病院循環器内科部長の猪又孝元先生 Q&A
Q 1
Q 2
Q 3
運動のしすぎで心臓が大きくなる「スポーツ心臓」が心配です(前編)
Q 4
Q 5
ときどき脈が速くなったり、ドキンとしたり。これは心臓の異常?
Q 6
Q 7
血圧を上げないよう言われています。どの程度の運動なら大丈夫?(後編)
Q 8
Q 9
歩くだけでふくらはぎとすねが痛み、こむら返りと動悸も…(後編)
Q10
編集部 今回は、北里大学北里研究所病院循環器内科部長の猪又孝元先生に、読者の心臓に関する悩みについて伺っています。中編最初の質問は、朝は高血圧なのに日中血圧が下がり、ふらついてしまうという方からです。
朝は高血圧なのに、日中に血圧がガクッと下がる
息切れ、手足の指の冷えがあり、たまに不整脈が起こるときがあります。さらに、朝の血圧は上が150mmHgくらい 、下は85~90mmHgなのですが、 夜は上が50~60mmHgまで下がり、ふらついて大変です。朝、歩き始めると血圧が下がり始めるのが自分でも分かり、ふらついてしゃがみこんでしまいます。
かかりつけの先生は「血圧を下げる薬はあるが、上げる薬はないので、塩分をとりなさい」と言います。「血圧が高いのに、いいのですか」と尋ねると、「どちらを優先するか選んでください」と言われました。私はどうすればいいのでしょうか。(88歳男性)
編集部 このように血圧が下がってしまう病気はあるのでしょうか。
猪又 血圧ががくんと100mmHgぐらい下がる病気は、確かにあります。自律神経障害の一種です。ただ、それは医師が一生に1度出会うかどうかくらいまれな病気ですので、可能性は低いでしょう。この方については、まず本当に血圧が下がっているかどうかを調べる必要があります。
編集部 実際には下がっていない可能性があるのですか。
猪又 そうです。例えば不整脈があると、1拍1拍の血圧の値が違ってきます。血圧値は、心臓が打つ手前の状態で心臓がどのくらい血液を受け取れるかで決まります。不整脈で心臓が打つ前にすごく間延びしていると、血圧はすごく高くなります。逆に、速い脈を打っているときは、心臓が血液をとりこむ時間がないので、血圧が低く出ます。ですから、この方も血圧が本当に低いわけではなく、単に正確に測り切れていないのかもしれません。ただし、ふらつきという症状があるので、実際に低血圧の可能性もあります。
いずれにしても、血圧の数字だけで議論をしても意味がありません。数字はもちろん大切ですが、数字にこだわりすぎると「木を見て森を見ず」になってしまいます。数字ばかりを気にして全体像を把握しようとしない”数字病”にかかると問題です。数字を参考にしつつ、何が問題かを包括的に見極めていかなくてはなりません。
編集部 血圧の値だけを気にしていると、大本の病気を見誤るということですね。この方には、何か病気があるのでしょうか。
猪又 本人を診察していないので断言はできませんが、たぶん何かの心臓の病気だと思います。大本の病気が何かを調べたほうがよいでしょう。
編集部 今はかかりつけ医にかかられているようですが、循環器内科に相談したほうがよさそうですね。
まず、血圧が本当に低いのか、不整脈などの影響で低く見えるだけなのかを見極める必要があります。何らかの心臓の病気があるかもしれないので、専門医を受診して大本の原因を探りましょう。