健康長寿のカギを握る「筋肉」をテーマに、様々な情報をお伝えしてきた「カラダの強化書」は、今回で最終回となります。
私は、これまでの研究や講演活動の中で、より多くの人の「ヘルスリテラシー」を高めるためには、どうすればいいのかを考えてきました。ヘルスリテラシーとは、一般的には「健康に関する情報にアクセスして、内容を理解し、自分に必要な情報を選び、活用する能力のこと」と定義されています。
健康長寿を実現するには、生涯にわたってヘルスリテラシーが高い状態を維持していくことが大切です。では、どのようにすればヘルスリテラシーが高い状態を維持することができるのか。今回は、このことをテーマにお話ししたいと思います。
ヘルスリテラシーには「意欲」と「持続性」も必要
まず最初に申し上げたいのは、日経Goodayの読者の皆さんのように、自ら健康に関する情報にアクセスしている人は、その時点で十分にヘルスリテラシーの高い人たちだということです。
しかし、そんなヘルスリテラシーが高い皆さんでも、得られた情報を基に、筋トレをする、食生活を見直すなど、健康のためになんらかの行動を起こすことは、なかなか難しいのが現実ではないでしょうか。「張り切って始めたものの、どうしても長続きしない」という人もいるかもしれません。その理由を考えてみたときに、ヘルスリテラシーにはさらに2つの要素が必要だということを強く感じています。それは、健康のために行動を起こそうとする「意欲」と、その行動を続けていける「持続性」です。
情報を正しく理解し、活用する意欲がわいて、無理なく続けられる方法で実践できた(習慣化できた)とき、私たちは初めて健康を手に入れることができます。私がこの連載で、「健康のためには〇〇しましょう」とただ勧めるのではなく、「なぜ、そうしたほうがいいのか」というエビデンスの解説を重視してきたのは、皆さんが情報を活用する「意欲」を持つためには、「納得感」が不可欠だと考えたからです。
ただ、この意欲は、様々な阻害要因から攻撃を受けます。阻害要因は人によって違ってきますが、例えば「忙しくて運動をする時間が取れない」「休みの日は疲れている」「暑いので(寒いので)運動をする気になれない」「ダイエットをしていても、周りにつられてつい食べ過ぎてしまう」など、様々な「できない言い訳」が攻撃を仕掛けてくるのです。
ですから、なかなか行動に移せない、いざ実践してみると続かないという人は、まず自分にとって何が阻害要因になっているのかを、冷静に考えてみるといいでしょう。そして、その阻害要因を克服するための対策も考えてみてください。
