健康寿命と筋肉の関係を20年以上前から研究してきた筑波大学スポーツ医学教授の久野譜也氏が、エビデンスに基づく「おとなの筋トレ」のススメや、健康寿命を延ばすための様々なヒントをお伝えしていくこの連載。今回のテーマは「健康長寿に立ちはだかる2つの壁」。最近、少しの段差でつまずきやすくなった…というあなたは必読です。
「少しの段差でもつまずきやすくなった」
「モノをまたいで通ろうとしたら、つま先が引っかかって転びそうになった」
最近、こんなふうに感じたり、経験したりしたことはないでしょうか。こうしたとき、「ツイていないな」「足元をちゃんと見ていなかったせいかな」などと考えがちですが、実はもっと根本的な原因があります。それは、「筋肉の衰え」です。自分はまだ若いから、たまたまつまずいただけだろう…と思いたい気持ちは分かりますが、それは、現実から目をそらしていることにほかなりません。
なぜなら、筋肉量は20代をピークに、30代以降は年間1%ずつ、右肩下がりに減り続けていくからです。 つまり、ピーク時に比べて、40代では10%、50代では20%、60代では30%も筋肉量が減ってしまうということです。
筋肉量の低下は特に、下半身を中心に進んでいきます。上半身と下半身の筋肉量の減少率を比較すると、下半身のほうが1.5倍大きくなっています。30代以降は、自覚がなくても、下半身の筋肉量の低下は少しずつ進んでいるのです。
筋肉量が10%、20%と減っていけば、当然、身体の動きにも影響が表れます。冒頭のように、つまずいたり転びやすくなったり、腰や膝が痛んだり、疲れやすくなったり、身体が思うように動かなくなったり…。そうなると、運動したり歩いたりするのがおっくうになって、ますます筋肉量が減ってしまい、運動機能や体力の低下が進み、要介護や寝たきりになるリスクも高まってきます。
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