超高齢化社会を迎えたわが国では、「ただ長生きをする」のではなく、いかに「健康寿命」を延ばすかに関心が集まっています。そのカギとなるのが、「筋肉」。本連載では、「健康で長生きするためには、筋肉というかけがえのない財産を上手に管理していくことが重要」と話す筑波大学大学院教授の久野譜也氏(人間総合科学研究科スポーツ医学専攻)が、エビデンスに基づく「おとなの筋トレ」のススメや、健康寿命を延ばすための様々なヒントをお伝えしていきます(編集部)。

「人生50年」と呼ばれた時代は遥か昔。今や日本人の平均寿命は男女ともに80歳以上となりました。女性の平均寿命にいたっては、2045年には90歳を超えると予測されています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」)。
一方、厚生労働省が発表した日本人の健康寿命(自立して生活できる期間)は、男性が71歳、女性が74歳。これは世界のトップではあるものの、平均寿命との差は男性で約9年、女性で約12年あります。つまり、この期間は、介護が必要になったり、寝たきりになったりして過ごしているということを意味します。平均寿命が延びた分、長い期間を要介護や寝たきりの状態で過ごす人も増えているのです。
では、健康で長生きするためには、どうしたらよいのでしょう? 重要なカギを握るのは、「筋肉」というかけがえのない“財産”を、いかに維持・管理していくかということです。日ごろから筋肉を鍛える運動をしていないと、人の筋肉は加齢とともに確実に落ちていきます。すると、身体が思うように動かなくなり、運動機能や体力の衰えが進み、歩けなくなったり転倒したりして、要介護や寝たきりになるリスクが高まります。逆に、今からしっかり筋肉をつけておけば、健康で自立して過ごせる期間を延ばすことは十分に可能です。
私がこうした健康長寿と筋肉の関係についての研究を始めたのは、今から20年以上前のことでした。
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