今回は脂肪にまつわる話をしたいと思います。脂肪と聞くと、皮膚の下につく「皮下脂肪」や、腹部などの内臓周辺につく「内臓脂肪」を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし今回は、第3の脂肪ともいえる「異所性脂肪」についてのお話です。
皮下脂肪や内臓脂肪は脂肪組織にたまるものですが、異所性脂肪は本来は脂肪がたまるはずのない、筋肉や肝臓、心臓、膵臓、血管などの細胞の中にたまります。
内臓脂肪の過剰な蓄積が生活習慣病を引き起こすことはよく知られていますが、実はこの異所性脂肪も、生活習慣病のリスクを高める隠れた要因になるとして、近年注目されています。
見た目には分からないところにたまる「異所性脂肪」の怖さ
異所性脂肪が肝臓にたまれば脂肪肝、骨格筋にたまると脂肪筋と呼ばれ、いずれも代謝異常を引き起こすことが分かってきています。異所性脂肪が過剰に蓄積すると、脂肪が毒性を発揮して、インスリンの働きを悪くするのです。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、主に糖を細胞内に取り込んで、血糖値を下げる働きをしています。ですので、インスリンの働きが悪くなれば血糖値が上がり、糖尿病やメタボリックシンドローム(メタボ)になるリスクが高まります。
内臓脂肪が蓄積しているかどうかは、メタボの基準にもなっている腹部の周囲を測るなどである程度分かります。でも、異所性脂肪の蓄積は見た目には分かりづらく、実際にはたまっていても、それほど太っていなかったり、やせて見えたりすることもあります。
「自分はそんなに太ってはいないから、糖尿病やメタボとは無関係」と思っている人は、要注意。肥満ではなくても高血糖や高血圧、脂質異常などを指摘されていれば、もしかすると異所性脂肪がたまっていて、「やせの糖尿病」や「やせメタボ」のリスクが高まっているかもしれません。
実際、日本人をはじめとするアジア人は、太っていない糖尿病患者が少なくなく、異所性脂肪がたまりやすい体質であることが示唆されています。