この連載ではこれまで、健康長寿を実現するには、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせて行うことが大事だとお話ししてきました。この運動習慣とセットで考えていただきたいのが、上手な食事のとり方です。栄養のバランスと摂取カロリーのバランスを上手に工夫すると、健康長寿に相乗効果をもたらします。
中高年になってくると、健康のために「肉よりも野菜を食べよう」「食事の量を減らそう」と考える人が少なくないようです。確かに、野菜の摂取不足やカロリー過多は、生活習慣病につながります。だからといって、野菜だけを多くとればいい、カロリーをできるだけ抑えればいい、というわけではありません。
たんぱく質をとらなければ筋肉は強化できない
栄養の観点からお話しすると、いくら筋肉の維持、強化のために筋トレや有酸素運動を行っても、筋肉の材料となるたんぱく質を十分にとっていなければ、期待する効果はなかなか得られません。
たんぱく質には植物性たんぱく質(大豆製品やごはん、パン、麺類)と動物性たんぱく質(肉、魚、卵、乳製品)があります。植物性より動物性の方が、たんぱく質を構成するアミノ酸のなかでも必須アミノ酸(体内で合成できず食品からとることが必要)をしっかりとることができ、筋肉を増やす際にも効率よく働きます。なかでも豚肉は、エネルギー代謝に関わるビタミンB1も豊富に含まれているのでお薦めです。

この連載の第1回でご紹介した「大洋村プロジェクト」では、高齢者の筋肉量などを調査し、安全で効果的な筋トレメニューを考案しましたが、研究の一環として、栄養調査も行いました。その結果、たんぱく質の摂取量に関しては、適切な量を摂取している人が少なく、不足または過剰のいずれかに二極化していることが分かりました。ですから、野菜だけ、肉や魚だけといった偏った食事にならないよう、バランス良くとることを意識してほしいと思います。
ちなみに、健康診断で行われる一般的な血液検査の項目の中で「健康長寿の指標」と考えられているものがあるのをご存じでしょうか? それは、「アルブミン」です。アルブミンは血液中のたんぱく質で、食事で摂取したたんぱく質が胃腸で消化吸収された後、肝臓に運び込まれて合成されます。健康長寿の人は血中アルブミン値が高いことが分かっており、血中のアルブミン値が高いほど、栄養状態が良好で、筋肉と骨格がしっかりしていることを意味します。