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データで見る栄養学

データが示す「食べていないのに太る」は記憶のウソ

人は食べたものの1~2割を忘れている

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

佐々木:人間には「認知バイアス」というものがかかっていて、都合の悪い情報を取り入れず、都合のいい情報を取り入れるようになっています。この場合、ケーキ・ビスケットなどの間食は「食べるとまずい」という認識があるため、無意識のうちに少なく見積もったのだと考えられます。

編集部:料理した野菜というのは?

佐々木:ハンバーグに入っている玉ねぎのように、料理の中に入っている野菜のことでしょう。これらはメインとなる肉や魚の影に隠れてしまい、記憶に残りにくいのだと思います。

編集部:特に、料理をしない人には分からないかもしれませんね。実際より多く思い出されているのは、ジャガイモやかゆですが、日本人で調査をしたら、ご飯になるのでしょうか?

佐々木:僕はそう見ています。

女性や太めの人は食べたものを過小申告する

編集部:食べたものを写真に撮って記録したらどうですか?

佐々木:僕はあまりお勧めしません。なぜなら、食べたものを全て記録できるとは限らないからです。テーブルにきれいに並んだ料理は撮るでしょうが、おかわりや食べ残しは撮らないでしょう? また、間食のあめやスナック菓子、飲み物なども忘れがちです。そもそも、何かをしながらこれらを食べるときは、スマホを持つ手は空いていないですからね。

編集部:そうですね。案外、無意識に食べているかもしれません。完璧に記録するって難しいのですね。

佐々木:50歳から76歳の日本人96人に、16日間食事記録をつけてもらった研究もあります(*3)。できるだけ丁寧にはかりで量っていただき、記録された用紙は管理栄養士が細かくチェックし、栄養価を計算しました。一方、性別、年齢、体重から基礎代謝量を推定しました。基礎代謝量とはじっとしているときに消費するエネルギー量のことです。

 普通の生活をしている人では、基礎代謝の1.75倍程度が1日の全エネルギー消費量、つまり、必要エネルギー量に近いと考えられています。したがって、食事記録で得られたエネルギー摂取量を基礎代謝量で割り、その数字が1.75よりもかなり低いと「過小申告あり」と判断されます。結果が図3です。

【図3】 肥満度別に見た食事記録上のエネルギー摂取量と基礎代謝量の比
【図3】 肥満度別に見た食事記録上のエネルギー摂取量と基礎代謝量の比
食事が正しく記録されていれば1.75前後になるはずだが、女性や太りぎみの人は少なく申告する傾向が見られた

佐々木:食事が正しく記録されていれば、1.75付近になるはずですが、女性は全ての体格で少なく申告していたのです! 食事の記録に「抜け」があった、つまり「忘れてしまっていた」ということです。そして、太りぎみの人ではその程度が大きくなっています。

編集部:男性も、太りぎみの人ほど少なく申告する度合いが大きいですね。

佐々木:「太めの人は自分が食べているものを少なく考えている」というのは、実は、世界中で観察されている普遍的な事実です。

編集部:「そんなに食べていないのに太る」と思っている人は、食べていないのではなくて、食べたことを忘れているのですね。人はどれくらい食べたものを忘れてしまうのですか?

*3 Okubo H, et al. The influence of age and body mass index on relative accuracy of energy intake among Japanese adults. Public Health Nutr. 2006;9:651-7.
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