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データで見る栄養学

データが示す「食べていないのに太る」は記憶のウソ

人は食べたものの1~2割を忘れている

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

 「そんなに食べていないのに太る」という声をよく聞く。「体質のせい?」と思いがちだが、それにはカラクリがある、と言うのは東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野教授の佐々木敏さんだ。私たちが太ってしまう理由や有効なダイエット法について、栄養疫学の視点から語ってもらった。

どうやら人間は、摂取したエネルギー(カロリー)を少なく申告したり、食べたものを忘れる癖があるらしい(c)Andrey Cherkasov-123rf

料理のカロリーは推定しにくい

編集部:体重が増えるのは、摂取エネルギーが消費エネルギーを超えるからですよね。でも、私は普段、何キロカロリー摂取していて、何キロカロリー消費しているか、よく分かりません。エネルギー(カロリー)計算をしたほうがいいでしょうか?

佐々木:摂取エネルギーの計算をする必要はあまりないと思います。なぜなら、摂取エネルギーを正確に把握することはできないからです。

編集部:え? 食べたものを記録して、使われている材料の重さからエネルギー量を計算して、合計すればいいんですよね。面倒ですが、頑張ればできるかも…。

佐々木:外食を記録するとき、その場で料理を食材にバラして、1つずつ別々にはかりに載せるわけにはいきませんよね。目についた材料の名前をメモしておくのが精一杯でしょう。重さは後から想像するしかありませんよね。

編集部:確かに。使われている材料が何gだったかを想像するのは難しそうです。

佐々木:「人間が食べたものをどのように思い出すのか」に関する面白い研究が米国にあります(*1)。大手ファストフード店で、食事が終わったばかりの人をつかまえて、「あなたが注文したものは何キロカロリーあったと思いますか?」と尋ね、同時に、トレイに残っているパッケージや包装紙から注文した品を調べたのです。注文したメニューのエネルギー量と、本人が推定したエネルギー量を比べたのが図1です。

編集部:多くの人が、実際のエネルギー量よりも少なく見積もっていたのですね。

【図1】 注文したメニューの実際のエネルギー量と本人が推定したエネルギー量の違い
米国のファストフード店で行った調査。エネルギー量の多いメニューを注文した人ほど、摂取エネルギー量を少なく見積もる傾向があることが分かる
[画像のクリックで拡大表示]

佐々木:エネルギー量の多いメニューを注文した人ほど、本当の値よりも少なく見積もっていた、という点にも注目したいところです。こういったことが起こる根底には、大きさや重さに対する見積もりの誤りがあります。

人は都合の悪いものは記憶から除外する

佐々木:「人間は食べたものを忘れる」という研究もあります(*2)。フィンランドの地域リハビリセンターに入所していた15歳から57歳の人、140人の食事を1日観察し、翌日に、昨日何を食べたかを尋ねた調査です。一定量(20g)以上食べられていた食品について、実際の重量と思い出した重量との違いを表したところ、図2のようになりました。

【図2】 何を食べたかを尋ねて答えた量と実際に食べた量との差
フィンランドでの研究。ジャガイモやかゆなどの主食は実際より多く思い出されているが、ケーキやデザートなど「食べるとまずい」食品は記憶に残りにくいようだ
[画像のクリックで拡大表示]

編集部:ジャガイモやかゆなどは実際より多く思い出されていますが、ケーキ・ビスケットや料理した野菜は、実際より少なく思い出されていますね。

*1 Wansink B, et al. Meal size,not body size,explains errors in estimating the calorie content of meals. Ann lntern Med 2006; 145:326-32.
*2 Karvetti RL, et al.Validity of the 24-hour dietary recall. J Am Diet Assoc 1985;85:1437-42.

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