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データで見る栄養学

「理想的なBMIは22」は本当なのか?

第4回 年代や状態によって異なる目指すべきBMI

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

編集部:はい。できれば健康で長生きしたいです。

佐々木:実は、年を重ねるにつれて肥満が死亡率の上昇に強く関与しなくなるのは、生活習慣や体質など肥満以外の影響が大きくなるからだと考えられます。「高齢者の健康維持にはBMI以外に幅広い目配りが大切」ということですね。

BMIが「安全範囲内」の人は悪い生活習慣の改善を

編集部:肥満が健康によくないことはよく知られていますが、やせ過ぎが死亡率を高めることはあまり知られていないかもしれません。肥満の人は、まずはBMI25未満を目指して減量に取り組めばいいと思いますが、肥満ではない人はどう考えたらいいでしょう? 例えば、私はBMI22ですが、長生きしたい場合、BMI24くらいを目指すべきでしょうか? とすると5kg太らないといけません。太るのは簡単なのですが……。

佐々木:運動量を減らして食べ続ければ、太るのは簡単かもしれません。しかし、それはよくありません。体重とは無関係に運動不足そのものが多くの生活習慣病のリスクになるからです。運動量を減らさずに食べて体重を増やすことができればいいですが、それは肥満の人が減量するよりも難しそうです。そういった場合、体重はそのままで、その他の生活習慣を見直すことをお勧めします。

編集部:その他の生活習慣というのは、喫煙、飲酒、運動不足などですか?

佐々木:はい。死亡率を上げる要因はBMIだけでなく、これらの生活習慣も関わっていることは先ほどお話ししましたね。例えばBMI23の人がBMI22を目指して減量するとします。しかし、この人が喫煙者の場合、減量よりも禁煙したほうがいい。禁煙すると高い確率で太りますが、そのほうが長生きします。BMIは23以上25未満であれば死亡率には大差はないので、この範囲内であれば体重が増えたことのデメリットよりも、タバコをやめたメリットのほうが相対的に大きいと考えられます。

編集部:なるほど。BMIが死亡率の低い範囲内であるならば、体重を気にするよりも、喫煙、運動不足、お酒の飲み過ぎなどの悪い生活習慣を改めたほうがいいということですね。

佐々木:それが冒頭の「BMI22を目指すべきか」という質問の答えになります。日本人の栄養摂取の基準として使われる『日本人の食事摂取基準(2015年版)』では、これまで解説した総死亡率や疾患別の発症率とBMIの関連、死因とBMIとの関連、日本人のBMIの実態に配慮し、総合的に判断した結果、目標とするBMIの範囲を以下としています。

【図5】 目標とするBMIの範囲
[画像のクリックで拡大表示]

編集部:結構幅がありますね。

佐々木:この範囲からBMIがはみ出す人は、まずは範囲内を目指しましょう。範囲内に収まっている人は、体重や体重がもととなるいろいろな健康障害が起こる確率は低いということですから、体重を増減させるよりも、悪い生活習慣を改めることを考えてみてください。

編集部:BMI22とピンポイントでいわれると覚えやすいのですが、答えは1つではないということですね。

佐々木:そうです。この幅が重要なんですよ。

編集部:なるほど。幅が重要なんですね。これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

【まとめ】

  • 30歳以上でメタボに関連した病気(高血圧、脂質異常症、糖尿病、心筋梗塞など)にすでにかかっているか、そのリスクを持っている人はBMI22あたりを参考にする。
  • それ以外で70歳までの人は25未満を参考に、やせ過ぎ、太り過ぎを避ける。
  • 70歳を超えたら、特にやせ過ぎに注意し、BMI21.5以上25未満を参考にする。

※ 次回は、「そんなに食べていないのに太る……」とお悩みのあなたに、栄養疫学から見た効果的なやせ方について解説します。お楽しみに。

佐々木敏(ささき さとし)さん
東京大学大学院医学系研究科 社会予防疫学分野教授・医学博士
佐々木敏(ささき さとし)さん 1994年、大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了、ルーベン大学大学院医学研究科博士課程修了(ベルギー)。2007年より現職。早くからEBN(evidence-based-nutrition:根拠に基づく栄養学)に注目し、日本初の食事摂取基準の策定に貢献。日本の栄養疫学研究の中心的存在。近著は『佐々木敏の栄養データはこう読む! 疫学研究から読み解くぶれない食べ方』(女子栄養大学出版部)。

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