「早食い」は太る! 忙しい人でも無理なく実践できる「太りにくい食べ方」とは?
第3回 食べる速度と肥満度の深~い関係
村山真由美=フリーエディタ―・ライター
佐々木:ある大学で学生さんに「あなたの食べる速さは?」という質問をして、「かなり速い」「やや速い」「ふつう」「やや遅い」「かなり遅い」の5段階に分け、本人の主観で答えてもらいました。よく一緒に食事をする友達の客観でもこの質問に答えてもらいました。結果、本人と友達の回答が完全に一致したのは全体の46%で、一つだけずれていた場合を含めると9割以上というとても高い一致率でした(図5)。このことから、この研究は完璧ではないにしろ科学的根拠に基づいていると認められ、さまざまな研究で使われるようになりました。
知っておきたい疫学研究の基本
質問の回答が信頼できるかどうかを調べる研究を「妥当性研究」という。上の場合、
- 本人と友達の答えの一致度が低い場合:
→本人か友達かどちらか(または両方とも)の回答が信頼できない。 - 本人と友達の答えの一致度が高い場合:
→(2-1) 本人も友達もどちらの回答もかなり信頼できる。
→(2-2) 理由は不明だが、食べる速さを同じように誤認する何か共通した理由がある。
と考えられる。しかし、このような質問があることは事前に知らせず、友達と相談しないで回答するようにお願いしたため(2-2)は考えにくく、(2-1)が妥当となる。このような質問もやり方によって「科学的根拠」を支える要素の一つになるという例。
なぜ「早食い」は太るのか
編集部:どうして早食いだと太るのでしょうか?
佐々木:一つは満腹中枢の働く速さに関連するもの。速く食べると満腹中枢が働きだす前に必要以上に食べ過ぎてしまうのかもしれないという考え。もう一つは、早食いの人は速く食べやすいものを選んで食べる傾向があるのではないかという考えです。それは、よくかまなくても飲み下せるものや、量(かさ)の小さなもの、食物繊維が少ない食べ物です。
編集部:速く食べると血糖値が急激に上がり、それを下げるためのインスリンが多く分泌され、結果、余分な糖が体脂肪として蓄積されやすくなるといいますね。早食いというと、「ハンバーガーをコーラで流し込む」とか、「丼ものをかき込む」とか「麺類をすする」などが想像できますが、主食、主菜、副菜に分かれている「和定食」を三角食べする場合、そんなに速くは食べられないですね。
佐々木:和食には、野菜、豆、きのこ、海藻など食物繊維が豊富なものが多く、よくかまないと食べられないですからね。図4の大学生女子を対象にした研究では、食べる速度が速い群ほど食物繊維摂取量が少ないことが分かりました。食物繊維の摂取量が少ないと肥満になりやすいことは数多くの研究で明らかにされています。また、早食いの人は、ゆっくり食べる人よりも糖尿病に2倍近くもかかりやすいという報告もあります(*7)。
- 次ページ
- パワーランチは損している?