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データで見る栄養学

「〇〇は体にいい」を一度疑ってみる

第1回 健康情報のエビデンス、その落とし穴とは?

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

 「よく飲むお酒と食品摂取量を調べた調査では、赤ワインをよく飲む人は、他のお酒を飲む人やお酒を飲まない人たちよりも、野菜や果物をたくさん食べていて、牛や豚といった赤身の肉や油で揚げた肉の摂取量が少なかったという結果が出ています(*3)」

 野菜や果物に多く含まれるカリウムは血圧を下げ、心筋梗塞を予防する効果があるとされる。一方、赤身肉には飽和脂肪酸が豊富で、とり過ぎると心筋梗塞のリスクが高くなると考えられている。つまり、「ワイン好きの人は、ワインによってというよりも、ワインを含めた食生活の結果として健康を保っていたのかもしれないとも考えられます」

 そもそも、アルコールには動脈の中で血液が固まるのを防ぐ働きがあるという。

適量の赤ワインに健康効果があるのはウソではないが、他のお酒はどうなのだろう(c)5second-123rf

 「ワイン、ビール、蒸留酒に分けて、飲酒量と循環器系疾患(主に心筋梗塞や脳卒中)の発症率を比べた世界中の研究を集めたメタ・アナリシス(*4)(*5)によると、お酒は種類を問わず、同様に循環器系疾患のリスクを下げる方向に働くことが分かっています」

 これらのデータから読み解けることは、「心筋梗塞の予防効果はアルコール自体にあり、お酒の種類はどれでもほぼ同じ。心筋梗塞の発症はお酒と合わせる食べ物の影響が大きい、ということです。赤ワインに含まれるポリフェノールが心筋梗塞の予防に寄与することも事実ですが、その効果は非常に小さく、プラスαに過ぎません」

 私たちはこの「プラスα」の部分を過大評価しているかもしれないというわけだ。「赤ワインにある種の健康効果を期待できるというのは嘘ではありません。しかし、もしあなたが、体にいいからと、好きでもないのに赤ワインを飲んでいるとしたら…。人生後悔するかもしれませんよ」

 「赤ワインをよく飲む人は総死亡率が低い」というデータは確かにある。しかし、そこで思考を止めてはいけないと佐々木さん。ワイン以外の影響はないのだろうか? 他のお酒と比較したらどうだろう? とちょっと疑ってみることが大切だという。

食べ物の健康影響は簡単には分からない

 「〇〇に含まれる〇〇は体にいい」という情報があると、私たちはそれを食べた影響しか考えない。しかし、「食べ物は薬ではないので、私たちは何かを食べたら、何かをやめています」と佐々木さん。

 「例えば、赤ワインを飲むために日本酒をやめた場合、赤ワインの成分は体に入ったけれど、日本酒の成分は体に入らなかった。つまり、赤ワインの健康効果から日本酒の健康効果を引き算する必要があります」

 また、「〇〇は〇〇を多く含むから控えましょう」という情報も誤解が生じやすいという。

 「私たちの体は、1食でできているわけではなく、長い期間食べたものの総合体としてできています。ですから、『イクラにはコレステロールが多い』というのは事実でも、イクラを年に1~2回しか食べない人だったら、ほとんど影響はありません。一方で、コレステロールをごくわずかしか含んでいないものでも、毎日食べるものは健康への影響が大きくなります」

 栄養健康情報では、食べ物に含まれる1つの成分が抽出して語られることが多いが、食べ物の本当の健康影響を調べるには、対象者が普段どんな食生活を送っているかを綿密に調査・観察する必要があるという。

 「それを栄養疫学といいますが、日本にはこれまで栄養疫学者がいなかったため、食品学や薬学から見た成分の話が先行しがちです。食べ物と健康の関連を探る科学を『人間栄養学』といいますが、残念ながら、我が国では人間栄養学が盛んではありません。そのためか、学問的に明らかにされていない情報が社会に流出しやすいのです」

その情報を出すことで得をするのは誰?

 私たちが健康情報に惑わされやすい環境にあることは分かった。そして、惑わされないためには、「エビデンスがあるからといって思考を止めないこと」や、「成分ではなく食事で考えること」など、いくつかのポイントがあることも分かった。しかし、正直なところ難しそうだ。もっと簡単に情報を見極める方法はないのだろうか?

*3 Barefoot JC ,et al.Alcoholic beverage preference,diet,and health habits in the UNC Alumni Heart Study. Am J Clin Nutr. 2002;76:466-72.
*4 メタ・アナリシス:複数の研究を集め、データを統合したり比較したりする分析研究法で、より普遍的な情報を得ることができる。
*5 Costanzo S ,et al.Wine beer or spirit drinking in relation to fatal and non-fatal cardiovascular events: a meta-analysis. Eur J Epidemiol. 2011;26:833-50.

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