中性脂肪値を上げるのは油ではなく炭水化物
第6回 肥満かどうかで実は違う!中性脂肪値の下げ方
村山真由美=フリーエディタ―・ライター
佐々木:しかし、気をつけてほしいのは、炭水化物を脂質に食べ替えるときに飽和脂肪酸を選ぶとLDLコレステロール値や総コレステロール値が上がるという点です(前回記事「コレステロール値が気になる人は揚げ物や肉を控えるべき?」参照)。ひと口に脂質異常症といっても、その人の課題が中性脂肪値なのかLDLコレステロール値なのかによって、食べ方は違ってくるということですね。
肥満や飲酒も中性脂肪値を上昇させる
編集部:私たちは「油を食べると中性脂肪値が上がる」「コレステロールを食べると血中コレステロール値が上がる」と考えがちですが、そんなに単純ではないのですね。
佐々木:「油を食べると中性脂肪値が上がる」というのは、完全な誤りではありません。油をとり過ぎると肥満になります。肥満はそれだけで中性脂肪値を上げる原因になるので、「油のとり過ぎ→肥満→中性脂肪値上昇」と肥満を介して中性脂肪値を上げることになります。
編集部:油に限らず、何を食べて肥満になっても中性脂肪値は上がるということですか?
佐々木:はい。炭水化物、脂質、たんぱく質、アルコールはエネルギー源になるので、これらをとり過ぎて肥満になれば中性脂肪値は上がります。一方、炭水化物のとり過ぎはダイレクトに中性脂肪値を上げます。中性脂肪値を上げる食事には、「炭水化物のとり過ぎ」と「肥満」を介するルートの2つがあるということです。
編集部:中性脂肪値が高くて肥満という人は多いですよね。
佐々木:中性脂肪値が高くて肥満の人は、食べ過ぎや運動不足に気をつけて、まず肥満を解消しましょう。一方、中性脂肪値が高くて肥満でない人は、炭水化物やアルコールのとり過ぎを疑いましょう。
編集部:アルコールのとり過ぎも中性脂肪値を上昇させるのですね。
佐々木:はい。以下は、韓国人男性と台湾人男性を対象に、飲酒量と高中性脂肪血症(中性脂肪が150mg/dL以上になった状態のこと)の発症率の関連を調べたものです。これによると、お酒は1日1合を超えると、飲まない人に比べて高中性脂肪血症になりやすいことが分かります[注3][注4]。
![飲酒量が多いほど中性脂肪値が高いことが分かる。出典は[注3][注4]、グラフは『佐々木敏の栄養データはこう読む!』(女子栄養大学出版部)を参考に編集部で作成](/atcl/column/17/062800007/030200024/3.jpg?__scale=w:400,h:563&_sh=04f0900c20)
編集部:韓国の人よりも台湾の人のほうが中性脂肪値が上がりやすいのはなぜですか?
佐々木:韓国の研究では「飲酒→肥満→中性脂肪値の上昇」の影響を取り除いて、飲酒と中性脂肪値の関係を示してあるのに対して、台湾の研究ではこの計算処理が行われておらず、肥満によって中性脂肪値が上がったケースが含まれているためだと考えられます。
編集部:なるほど。いずれにしても飲酒量が多いほど高中性脂肪血症も多くなるということが分かりますね。
[注4]Yoon YS, et al. Alcohol consumption and the metabolic syndrome in Korean adults: the 1998 Korean National Health and Nutrition Examination Survey. Am J Clin Nutr 2004; 80:217-24.
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