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データで見る栄養学

コレステロール値が気になる人は揚げ物や肉を控えるべき?

脂質との上手な付き合い方

 村山真由美=フリーエディタ―・ライター

佐々木:植物油を使った揚げ物ではコレステロールは上がらないので、むやみに避ける必要はありません。ただし、そうはいっても山盛り食べてはいけません。脂質はどの種類もエネルギーが多いので食べ過ぎれば太ります。また、肥満は脂肪酸とは別の理由でコレステロールを上げてしまうことがあるので、肥満気味の人は揚げ物も含めてエネルギー制限をして、体重を減らすことをお勧めします。

飽和脂肪酸のとり過ぎの原因は肉だけではなかった!

編集部:先ほどのキースの研究では、食品中に含まれるコレステロールも血液中のコレステロール値を上げるということでしたが、卵などは、やはり控えたほうがいいですか?

佐々木:個人差はありますが、全体としては、食品からコレステロールをとれば、それに応じて血液中の総コレステロール濃度が上がります。以下は、飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量を減らすと、血液中の総コレステロール濃度がどれくらい下がるかをキースの式を使って計算したものです。スタート地点のコレステロール305mgと飽和脂肪酸14.4gは、平成24年国民健康・栄養調査における20歳以上男女の1日当たりの摂取量の平均値です。

20歳以上の日本人男女の平均的な摂取量から、飽和脂肪酸またはコレステロール摂取量を減らした場合の血中コレステロール濃度の変化を調べた。佐々木敏調べ。『佐々木敏の栄養データはこう読む!』(女子栄養大学出版部)より転載
[画像のクリックで拡大表示]

佐々木:コレステロールの摂取を1日当たり130mg減らして175mgにしたときと、飽和脂肪酸の摂取を1日当たり3.4g減らして11gにしたときに、血液中の総コレステロール濃度はおよそ4.5mg/dL下がりました。これは、コレステロールは卵半個分(65g)、飽和脂肪酸は牛乳(普通乳)コップに軽く1杯分(150mL)に相当します。

編集部:卵半分と牛乳軽く1杯分の影響が同じなんですね。コレステロール値を気にしていると、食品のコレステロールのことばかりを考えがちですが、飽和脂肪酸の影響が思いのほか大きいということですね。

佐々木:どちらの影響が多いと見るかは、他の栄養素のことも含めて考えないといけませんが、飽和脂肪酸の摂取量は無視できません。さて、ここで質問です。日本人は何から飽和脂肪酸をとっているかご存じですか?

編集部:肉ですよね?

佐々木:実は、肉と乳類はほぼ同率1位なんです。国内4地域の成人(44~63歳)男女211人の飽和脂肪酸の摂取源を調べたところ、肉(の脂身)と乳類(牛乳などに含まれる乳脂肪)が各27%、25%と全体の半分を占めていました(*4)。

編集部:え? 意外です。

佐々木:健康な人はいいのですが、脂質異常症の人は気をつけたほうがいいです。ヨーグルトや牛乳をとるなら低脂肪のものを選びましょう。

編集部:肉の脂には気をつけていても、ヨーグルトや牛乳の脂は気にしていない人が多いかもしれません。「健康のために」と毎日せっせととっていたヨーグルトが、実は飽和脂肪酸のとり過ぎにつながっていたかもしれない…。これは、落とし穴ですね。

佐々木:飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量の推移を調べてみると、1956年(昭和31年)から1972年(昭和47年)まではどちらも同じ割合で増加しています(*5)。しかし、コレステロールの摂取量は72年をピークにその後減少に転じています。一方、飽和脂肪酸は現在まで増え続けています。その結果、72年に比べて飽和脂肪酸は3割増、コレステロールは3割減となっています。

編集部:なぜ、コレステロールの摂取量は減り、飽和脂肪酸の摂取量は増え続けたのでしょうか?

佐々木:その理由を詳しく調べた研究は見当たりません。しかし、卵の摂取量の推移がコレステロールの摂取量の推移に、乳類の摂取量の推移が飽和脂肪酸の摂取量の推移に似ているのは興味深いところです。

編集部:ここまで伺って、「脂質」とひと口に言っても、種類によって体内での働きは全く違うということがよく分かりました。ということは、冒頭の「脂質の数値が悪くなるのは、肉や揚げ物で油をとり過ぎたからですか?」という質問の答えは…。

佐々木:「肉の脂身などに含まれる飽和脂肪酸や食品に含まれるコレステロールは血液中の総コレステロール値を上げやすいが、日本人がよく使う植物油は血液中の総コレステロール値を上げない。また、コレステロールと飽和脂肪酸では、気をつけるべき栄養素はコレステロールから飽和脂肪酸へと変わってきている。そして、飽和脂肪酸で気をつけたいのは肉だけでなく乳類も」となります。

*4 Sasaki S, et al. Development of substituted fatty acid food composition table for the use in nutritional epidemiologic studies for Japanese populations: its methodological backgrounds and the evaluation. J Epidemiol. 1999;9(3):190-207.
*5 Ueshima H, et al. Declining mortality from ischemic heart disease and changes in coronary risk factors in Japan, 1956-1980. Am J Epidemiol. 1987;125:62-72.

※次回は、中性脂肪値と食事の関係についてです。お楽しみに!

(作図 増田真一)

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佐々木敏(ささき さとし)さん
東京大学大学院医学系研究科 社会予防疫学分野教授・医学博士
佐々木敏(ささき さとし)さん 1994年、大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了、ルーベン大学大学院医学研究科博士課程修了(ベルギー)。2007年より現職。早くからEBN(evidence-based-nutrition:根拠に基づく栄養学)に注目し、日本初の食事摂取基準の策定に貢献。日本の栄養疫学研究の中心的存在。新刊『佐々木敏のデータ栄養学のすすめ』(女子栄養大学出版部)が2月上旬発売。

【Goodayのムック】
「油・脂肪の正しいとり方」「油・脂肪の最新トレンド」から、 ミドル以上の多くの人が気にする「中性脂肪・コレステロール値の下げ方」 「万病の元となる“内臓脂肪”の下げ方」までを一挙に紹介。

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