腰痛や肩こり、首や膝の痛みといった「整形外科的な痛み」の背景にあるのは、座り方や姿勢などの生活習慣。痛みを治し、再発させないための日常的な対処法を、整形外科医でカイロプラクターの竹谷内康修さん(竹谷内医院院長)が指南します。今回のテーマは、「ストレートネック」です。
背骨はS字形にカーブしているのがいい
みなさんは小学生の頃、先生に「背すじをまっすぐに伸ばしなさい」と言われたことはありませんか。もちろん、これは姿勢をよくしましょうという意味ですが、少なくとも背中の中央を走る骨、つまり背骨に限っていえば、“まっすぐ”はよい状態ではありません。
実は、健康な背骨というのは、前から見るとまっすぐですが、横から見るとゆるくS字形にカーブしているのです。
細かくいうと、頸椎(首の部分にある7個の椎骨)は、カーブの丸みが前に向かうように曲がっています。一方、その下にある胸椎は後ろに向かうように曲がり、さらにその下にある腰椎は再び前に向かうように曲がっています。
こうしたS字形のカーブは「生理的弯曲」と呼ばれており、重い頭や胴体を支えつつ、背骨に伝わる衝撃を和らげるバネのような働きを持っています。
逆にいえば、このカーブが失われると、背骨への負担が増してしまうのです。これが、「ストレートネック」と呼ばれる状態です。
ストレートネックは頸椎症のリスクが高まる
肩こりや背中の痛みが激しくなって専門医を訪ねると、「ストレートネックですね」と言われることがあります。
ストレートネックは、日本語にすると「まっすぐな首(頸椎)」という意味。ちょっと聞くと、「まっすぐならばいいじゃないか?」と思いがちですが、先ほど述べたように、背骨はS字形にゆるやかにカーブしているのが健康的な状態です。そして、頸椎はやや前方向に弯曲しているからこそ、頭を真上の位置に置くことができ、その重さを支えられるのです。
ところが、ストレートネックとなって頸椎のカーブがなくなると、頭が前方に出た位置になってしまいます。この状態で、ずっと重い頭を支えようとすれば、首や肩の筋肉に大きな負担がかかるのはお分かりでしょう。
その結果、肩こりや首の痛み、そして前回まで紹介してきた「頸椎症」になるリスクが高まってしまうのです。
頸椎だけでなく、ストレートネックの人は、胸椎や腰椎の健康的なカーブも失われていることがほとんどなので、腰痛や膝痛にもなりやすい状態なのです。