腰痛や肩こり、首や膝の痛みといった「整形外科的な痛み」の背景にあるのは、座り方や姿勢などの生活習慣。痛みを治し、再発させないための日常的な対処法を、整形外科医でカイロプラクターの竹谷内康修(たけやち・やすのぶ)氏(竹谷内医院院長)が指南します。今月のテーマは、腰痛を再発させない「座り方」改善法です。
日本人みんなが悩んでいる「こりや痛み」の正体は?
おそらく、このコラムをお読みの方の多くは、「腰がつらい」「肩がこる」「首が痛い」といった自覚症状をお持ちのことと思います。
厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」でも、病気やけがなどによる自覚症状のうち、男性では腰痛が1位で肩こりが2位、女性では肩こりが1位で腰痛が2位につけています。
症状 | 第1位 | 第2位 | 第3位 | 第4位 | 第5位 |
男性 | 腰痛 | 肩こり | 鼻が詰まる・鼻水が出る | 咳やたんが出る | 手足の関節が痛む |
女性 | 肩こり | 腰痛 | 手足の関節が痛む | 体がだるい | 頭痛 |
まさに、国民病といってよいほどの痛みやこりですから、さぞかし研究が進んでいると思われるかもしれません。しかし、正直なところ、その正体はよく分かっているようで、分かっていないのです。
というのも、こりを含めて「痛み」というのは知覚であり情動なので、第三者からはその状況がよく分からないからです。
情動は、分かりやすくいえば、感情や気分のようなものです。もちろん、どこかに原因があるからこそ痛くなるのですが、痛さの感覚自体は感情に近いものとしてとらえられているのです。
仮に、まったく同じ体の状態の人がいたとしても、感じる痛みは必ずしも同じとは限りません。ひどく痛みを感じる人もいるでしょうし、あまり感じない人もいます。
痛みの感覚は人によって違い、絶対的なものではないのです。ですから、外から見ただけではどのくらい痛いのかが分かりません。
「この痛みは40ほど。こちらは80くらい」といったように検査で数値化できればいいのですが、それができないのが治療する側にとって難しい点です。
不思議なことに、それまでひどい腰痛に悩んでいた人が、仕事のストレスから解放されると急に痛みが軽くなるということがよくあります。さらにいえば、ストレスの原因を本人が自覚したとたんに痛みが軽減されることさえあります。
まさに情動なのです。
この場合、一つの考えとして、ストレスにさらされることで自律神経のうちで交感神経が優位になり、筋肉の緊張が高まって、骨、関節からの痛みが出るということがありえます。そのために、ストレスから解放されると筋肉の緊張がやわらいで、痛みが減るのかもしれません。
とはいえ、それでも分からないことだらけなのです。