怖い浴室~平幹二朗さん急死の報に接して
冬場はヒートショック現象で血圧が乱高下の恐れ
榎木英介=近畿大学医学部附属病院臨床研究センター講師・病理医
厚生労働省の調査では、溺死も含め、風呂場で死亡する人は年間1万9000人と推定されており、交通事故死の4倍以上に達する。
死亡者数は1月がピークだが、10月から急に増え始める。幼児や乳児の溺死を除けば、高齢になればなるほど死者数が増える傾向にある。
入浴中の突然死、独居の高齢者は要注意
日本法医学会の調査では、浴室での死者のうち、独居者は40%を占める。発見の経緯としては、「独居のため、安否確認により知人や警察官などが発見」が最も多かったという。平さんのケースがこれに当たる。
高齢のご家族が独居されている場合などは、特に注意してほしい。
そして、家族のみならず、私たち自身も、浴室が危険な場所であることを認識すべきだ。
熱い長風呂、アルコールを飲んだ直後などは避けるべきであり、更衣室と浴室の温度差に注意をはらってほしい。
そして、突然死が心臓や血管、とりわけ動脈硬化が原因となる場合が多いことを意識し、普段から生活習慣に注意すべきだ。
消費者庁は入浴中の事故を防止するために、以下のことを守るよう呼び掛けている。
- 入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう。
- 湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう。
- 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。
- アルコールが抜けるまで、また、食後すぐの入浴は控えましょう。
- 入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらいましょう。
平さんの急死の報を、浴室での突然死を防ぐための警鐘とすることで、平さんの功績に報いたい。
消費者庁「冬場に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」
東京都健康長寿医療センター「わが国における入浴中心肺停止状態(CPA)発生の実態-47 都道府県の救急搬送事例 9360 件の分析-」
日本法医学会課題調査報告 浴槽内死亡事例の調査(2014年3月)
近畿大学医学部附属病院臨床研究センター講師・病理医
