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榎木英介の「病理医の視点」

複数のがんにかかるのが珍しくない長寿社会~大橋巨泉さんの死から考える

 榎木英介=近畿大学医学部附属病院臨床研究センター講師・病理医

2016年7月20日に発売された『ゲバゲバ人生』(講談社+α文庫)。

 テレビ司会者として一世を風靡(ふうび)したタレントで元参議院議員の大橋巨泉さんが、2016年7月12日に亡くなった。82歳だった。

 クイズ番組『クイズダービー』や情報番組『11PM(イレブンピーエム)』などの司会を務め、まさに戦後を代表する司会者だった巨泉さん。晩年の自由なセミリタイア生活も話題となった。私にとっては『クイズダービー』での「倍率ドン!」や、『ギミア・ぶれいく』での英語でのインタビューなどが印象深い。心からご冥福をお祈りしたい。

50代半ばでセミリタイア、70代の最後に2度目のがん

 56歳でセミリタイアした巨泉さん。晩年は、がんとの闘いだったといえるだろう。

 報道された夫人の手記によれば、2005年に胃がんの手術を受け、2013年には中咽頭がんでステージIV(転移などがあり、手術での治癒が難しいほど進行した状態)と診断されていた。放射線治療を4回、手術を3回受けたというが、次第に衰えていったそうだ。2015年11月以降に腸閉塞を患い、手術を受けていたという。

 直接の死因は「急性呼吸不全」と公表されているが、広い意味でのがん死といえるだろう。病床で横になっている時間が長いと、嚥下性肺炎を起こしたり、横隔膜などの筋肉の衰えによって呼吸機能が低下したりすることがある。

 さらに、手記によれば、4月にモルヒネ系鎮痛薬(オピオイド)を誤投与(過剰投与)されたことが巨泉さんの寿命に影響を与えたという。モルヒネ系鎮痛薬の副作用には、呼吸抑制(息がしにくくなる)や腸閉塞などがある。巨泉さんの命を奪った急性呼吸不全はモルヒネ系鎮痛薬の直接的な副作用ではないとは思われるが、誤投与を契機として、巨泉さんは体力を奪われ、命を削っていったと推測する。

 この誤投与がどのようなものであったのか、情報がないので、これ以上は触れないでおく。

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