人類最大の感染症と言われる歯周病。加齢とともに歯周病の人は増え、45歳以降では、歯を失う原因の50%以上を占める。歯周病の原因となる細菌は数十種類ともいわれ、口の中から検出される菌の種類によっては、治療しても治りにくいタイプのものも。適切な診断と治療のためには、「歯周病細菌検査」が役立つ。

厚生労働省の平成26年「患者調査」によれば、「歯周炎および歯周疾患」の総患者数は331万5000人。3年前に行われた前回調査より65万人以上も増加している。これは、歯周炎などについて継続的な治療を受けていると推測される人の数なので、実際の歯周病の人はさらに多い。
このように、多くの人がかかっている歯周病。歯ぐきなど歯の周りの組織に細菌が慢性的に感染することで起き、「サイレント・ディジーズ」ともいわれ、自覚症状がなく進行していく。「たかが歯周病、死ぬわけじゃない」、と侮ることなかれ。歯周病の原因菌は、日本人の死因第3位となる肺炎を引き起こす細菌でもある。さらに、歯周病は糖尿病のリスクを上げたり、心疾患の発症リスクを上げるなど、全身の病気との関わりも明らかになっている。
「歯周病の3因子」の一角を占める歯周病菌

そんな歯周病の原因となる主な因子は3つ。1つ目は、感染の原因である細菌だ。口の中には数百種類の細菌がおり、その中に、P.g.菌(Porphyromonas gingivalis)をはじめとして歯周病を引き起こす原因となる細菌がいる。しかもそれは、実に数十種類に上ることが分かっている。そして、2つ目の要因が、免疫などの体の中の状況。3つ目が喫煙習慣やストレス、食生活などの環境因子だ(図1)。
「歯周病は、これらの因子が密接に絡み合いながら、『発症』したり『悪化』したりします。そのため、口の中に同じ菌がいても、歯周病が発症する人もいればしない人もいるというわけです」と、篠崎デンタルクリニック インプラントセンター(東京都大田区)院長で歯周病専門医の篠崎稔歯科医師は説明する。
3つの因子の中でも、最近注目を集めているのが歯周病の原因菌だ。それは、口の中にいる歯周病菌の種類が、歯周病の治りやすさや重症度に関係していることが分かってきたからだ。