梅雨どきは気圧が変動しやすくなり、その影響で気管支ぜんそくの発作を起こす患者が増える。息苦しくなり呼吸のときにヒューヒュー・ゼーゼーと音がするという典型的な症状がなく、咳(せき)だけが出る場合もぜんそくの初期である可能性が。そこで、息を吹き込むだけでぜんそくを診断できる「呼気NO検査」が、早期診断の切り札として注目されている。
梅雨どきなど季節の変わり目は、気圧の変動などの影響で咳が長引きやすい。それが気管支ぜんそく(以下、ぜんそく)や「隠れぜんそく」とも呼ばれる咳ぜんそく(症状として咳だけが表れる、初期のぜんそく)によるものなのか、それとも他の病気の症状なのかを見分けることは、従来は容易でなかったという。
「呼気(こき)NO(エヌオー)」とは、吐く息(呼気)の中に含まれる一酸化窒素(NO)のこと。その量を測る検査が「呼気NO検査」で、NOの量によって気管支などの気道にどの程度炎症があるかが分かる。ぜんそくの場合、気道に慢性的な炎症が起こるので、吐く息の中のNOの量が多ければぜんそくだと診断できる。
「呼気NO検査の登場で、気道の炎症があるかどうか、つまりぜんそくなのか、それ以外の病気なのかを簡単に判別できるようになりました。今では長引く咳のため当院を受診した患者さんのほぼ全員に、まず呼気NO検査を行っています」と、ぜんそくなどの呼吸器の病気を専門とする東京女子医科大学第一内科主任教授の玉置(たまおき)淳氏は話す。
息を10秒間吹き込むだけの「つらくない」検査
呼気NO検査では、息を吐いた状態でマウスピースをくわえ、息を最大限吸い込んでから、10秒間息を測定装置に吹き込む。すると1分ほどで、息の中のNOの量が画面に表示される(写真1)。検査そのものは大学病院などで以前から行われていたが、装置の小型化が進んだことに加え、2013年に健康保険(公的医療保険)が適用されるようになって以降、地域の病院や診療所でも呼気NO検査が受けられるところが増えている。