血液検査で7種類のがんのリスクがわかる「アミノインデックスがんリスクスクリーニング検査」。簡便な方法で一度に多くのがんリスクを調べられ、しかも早期がんを見つけられる。がんの発見率は、全国の人間ドック平均より高いとの報告も。費用は2万5000円程度で、導入する医療機関が増えている。
がんは日本人の2人に1人が罹患するといわれる身近な病気。日頃から検診を受けて、早期発見・早期治療に努めることが重要だ。ただ、そうはいっても多忙だったり、面倒だったりで、がん検診を定期的に受けていない人も多いだろう。肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5つのがんについては自治体ががん検診を実施しているが、受診率は5割に満たず、その低さが問題になっている。
そんな中、血液検査という簡便な方法で、1度に7種類のがんのリスクが分かる検査法が注目されている。「アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AICS=AminoIndex Cancer Screening)」と呼ばれる検査だ(以後、アミノインデックス検査)。2011年から人間ドックなどに導入されて以来、2016年3月末までに約15万人が検査を受けている。
がんになると血中のアミノ酸バランスが変化する
私たちの体は約6割が水分、約2割がたんぱく質で構成されている。このたんぱく質の構成成分がアミノ酸。バリン、ロイシン、ヒスチジン、アラニン、システインなど20種類がある。また、これらとは別にオルニチンやシトルリンなど、たんぱく質を構成しないアミノ酸も血液中には存在する。「これらのアミノ酸の血中濃度は、健康な人では常に一定に保たれるようにコントロールされていますが、がんになるとそのバランスが崩れてしまう。この変化を捉えることで、がんにかかっているリスクを判定するのがアミノインデックス検査です」。こう話すのは、足利工業大学看護学部学部長の山門實氏だ。山門氏は三井記念病院総合健診センター(東京都千代田区)の所長在職時から、味の素(本社:東京都中央区)と一緒にアミノインデックス検査の開発に携わってきた。
血中のアミノ酸バランスは、がんの種類によって特有の変化を示すという。例えば肺がんの場合は、健康な人に比べてグルタミンやヒスチジンなどが減り、オルニチンやセリンなどが増加。また胃がんでは、トリプトファンやヒスチジンをはじめ、健康な人よりもアミノ酸全体が減ってしまう。
アミノインデックス検査では、こういったがん特有のパターンと比較することで、がんにかかっているリスクがどのくらいあるかを判定する。「大勢の健常人と各がん患者の血中アミノ酸濃度をコンピューター解析することで、『正常』と『がん』との区別が可能になりました。アミノ酸の測定技術の進歩もあり、わずか5mLの採血で判定ができます」(山門氏)。