5人のメンバーでプロジェクトを進めているが、意見が衝突したり、メンバー同士が対立したりすることもあり、なかなかうまく運ばない。チーム力を高めるには、どのようにコミュニケーションを図っていけばいいだろう。
経済成長が頭打ちとなり、ビジネス競争が激化する中で、職場では個々の成果や業務の効率化が求められる一方、働く者の権利や立場を守る意識も強まっています。とくに、近年は価値観が多様化し、それまでのキャリアや勤務形態などのバックグラウンドが異なるメンバーが共に働く環境では、条件や感情、認知(捉え方)といった要素が複雑に絡み合い、対立や衝突、軋轢(あつれき)などが生じやすくなっています。
衝突は“避ける”よりも、“結束のチャンス”と捉える

伝統的に和を重んじてきた日本人は、こうしたコンフリクト(衝突、対立という意味)が苦手で、「できれば避けたい」と考える人も多いようです。しかし、コンリフリクトを避けるために、自分の意見を主張しなかったり、妥協したりしていると、葛藤や不満が溜まって、うつ状態を招くこともあります。とはいえ、自分の意見を押し通してばかりいても、ハラスメント(いやがらせ)につながります。
コンフリクトが起きたとき、自分がすべて譲歩したり、相手を打ち負かそうとしたりしても、いい解決は図れません。互いの立場を尊重しながら、協調的に納得のいく解決策を検討していくことが重要です。率直な意見を交わし合ったり、ゼロサム(*1)ではない視点や選択肢を模索したりすることで、相互理解が深まり、意思決定の質を高めることもできるでしょう。チーム力の向上や自己の成長にもつながるはずです。
*ゼロサムとは、一方の利益が他方の損失になること。
「傾聴」では同意と共感を示し、相手に問いかける
コミュニケーションを図るうえで大切なのは「傾聴」の姿勢です。コンフリクトの場面では、傾聴の姿勢は一見、自分が折れているように思えるかもしれません。しかし、まずは相手の話に耳を傾け、そこから建設的な解決策を探っていくのです。傾聴の姿勢には、次の3つのポイントが重要です。
傾聴の3つのポイント
1.「肯定的関心」の態度
相手の話に否定や反論はせず、肯定的に関心を持って受け止める態度を示す。
具体的には → 同意を示す
- 相手の話が要領を得なくても、まずは最後まで聞く
- 「でも」「だけど」などの言葉を挟んで、相手の話を遮らない
- 相手の目を見てうなずき、相槌を打つ など
2.「共感的理解」の態度
相手の立場で考え、感じてみようとする理解の態度を示す。
具体的には → 共感を示す
- 相手が特に重要視していることは、相手と同じ言葉を使って繰り返す
- 相手の感情を推察して、「それは大変だね」などと共感を示す など
3.「非指示的」なアプローチ
どうすれば相手が自らそうしたくなるかを考えながら対応する。
具体的には → 相手の話や行動を促す
- 相手に質問をして、話を引き出したり、意見を求めたりする
- すぐに解決策を示したり、指示を出したりしない
- 相手の間違いを指摘せず、自分で気づくように導く など