ニッケイ太郎 「来週、入院が決まったんだけど、5日間ぐらいで退院できそうだから、個室に入りたいと思っているんだ」
グッデイ花子 「へえ、1泊いくらなの?」
ニッケイ太郎 「1万円」
グッデイ花子 「えっ、そんなに高いの?! ホテル並みね。でも保険を使えば3000円か」
ニッケイ太郎 「いや、保険は利かないよ。差額ベッドだから」
グッデイ花子 「ふうん。そういえば、保険の利かないものっていろいろあるよね。人間ドックとか、予防接種とか。あ、出産もそうか」
ニッケイ太郎 「そうそう、保険外診療。自由診療ともいうね。自由診療を保険診療と併用すると、全額自己負担になってしまうらしいけど、差額ベッドみたいに例外的に認めてもらえるものもあるんだよ」
グッデイ花子 「???」

日本の国民皆保険制度は、だれもが等しい水準の医療が受けられる、世界的に見ても優れた制度です。しかし、私たちが加入する公的医療保険(健康保険)は、病気やけがで治療を受けた時の治療費の負担を軽減するための制度なので、医療行為であってもカバーしていないものがあります。
たとえば、日本では承認されていない薬や、研究段階にある治療などは、保険の適用外です。さらに、病気とはみなされずに健康保険が使えないものとして、健康診断・人間ドック、予防接種、正常な妊娠・出産、美容整形、歯列矯正、経済上の理由による妊娠中絶などがあります。こうした「保険外診療」は、「自由診療」と呼ばれることがあります。「自費診療」と言ってもいいでしょう。
何でもかんでも健康保険を適用してしまうと、限りある医療財源は、負担に耐えきれません。また、先進的な最先端医療についていえば、安全性や有効性をきっちり見極めてから、保険診療の枠組みに入れなくてはなりません。
値付けのしかたでいえば、「保険診療」は、診療報酬として公定価格が決まっていますから、いわば“社会主義”の統制経済の世界。これに対して、「保険外診療(自由診療)」は、言い値で決まる “資本主義”の世界で、コストやマーケットの需給を見極めて、各医療機関が価格を設定します。
保険診療と保険外診療の併用は原則として禁止されている
さて、日本の公的医療保険制度において、保険診療と保険外診療(自由診療)を併用して行うことを「混合診療」と呼びます。これは、原則禁止とされています。保険が適用されていない診療を併用したいという場合は、診察や検査、入院費用など、本来は保険診療の対象となる治療費も、全額自己負担となってしまいます。
なぜ混合診療は原則禁止なのでしょうか。それは、全額自己負担とすることで、安全性や有効性が疑わしい治療が安易に行われることに一定の歯止めがかけられるからです。混合診療が盛んに行われれば、保険適用部分の支出も増え、医療財政を圧迫します。これを避けたいという目的もあるのでしょう。
一方で、保険で承認されていない治療を受けようとしても、全額自己負担となれば、当然のことながら患者の医療費負担はかさみます。医療技術の進歩に伴い、治療の選択肢も広がり、患者のニーズも多様化してきました。こうしたことから、1984年に「特定療養費制度(現在の保険外併用療養費制度)」が創設されて、混合診療が限定的に認められるようになったのです。
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