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編集長インタビュー

ワインの本質とは? 人気生産者が語る「自然なワイン」の魅力

ロレンツォ・コリーノ氏「ワインの本質」を語る(1)

 寺西 芝=日経Gooday編集長

日本でもワインがブームになっているのはご存じの通り。中でも「自然派ワイン」「ビオワイン」(*1)と呼ばれる種類のワインが定着しつつある。イタリアの中でも「自然なワイン」の作り手として日本でも人気のある「カーゼ・コリーニ」のロレンツォ・コリーノ氏にインタビューした。持続可能な農業を考え、なるべくよけいな加工をしないで作られるコリーノさんのワインに対する考えは、昨今話題になっているSDGs(*2)にも通じる話だ。氏が言う「自然なワイン」とはどんなものなのか? その「ワインの本質」に迫った。

※この取材は2019年に行われたものです
イタリア北部ピエモンテ州にある「カーゼ・コリーニ」のロレンツォ・コリーノ氏

 イタリアの中でも赤ワインの産地で有名な北部ピエモンテ州のブドウ栽培農家に生まれ、英国ケンブリッジのPlant Breeding Instituteなど、ヨーロッパをはじめ世界各地で研究に従事し、ブドウ栽培に関する学術書も執筆する専門家ロレンツォ・コリーノ氏。彼の作るワイン「カーゼ・コリーニ」は、日本でも根強い人気がある。氏のワインは、「自然な方法」で作られることで有名だが、なぜそのような考えに至ったのか、彼の思想や健康についての考えを聞いてみた。

コリーノさんは、ワインだけでなく食文化全般についても独自の考えをお持ちです。まず、お尋ねしたいのは、健康になるためにはどのように食を選んでいけばいいとお考えでしょうか。

コリーノ氏 食べることは文化です。古代ギリシャの数学者・哲学者のピタゴラスは「食が体を作る」ことをよく知っていました。悪いものを食べると体がダメになるということです。その食べ物がどうやってできたのか、だれが作ったのか、それを考えて食品を選ばないといけません。本物の食品は体にとって喜びなのですから。植物は、自分では動けないので、防衛物質である代謝物質を分泌し、環境から身を守っています。これらの代謝物質は人にとっても有効だと考えています。例えば、ブドウの皮に含まれるステイルベニやレスベラトロールなどのポリフェノールはブドウが病気から身を守るための物質ですね。そして、自然環境を守って作られたものをとること。それが健康な食品をとることにつながると思います。

コリーノさんは、ご自身も代々続くブドウ栽培農家であり、ワインが文化であることの価値を説いていらっしゃいますね。ただ、今のワイン作りについてはいろいろと弊害もあるとおっしゃっていますが…。

カーゼ・コリーニのワイン(写真提供:ヴィナイオータ)
[画像のクリックで拡大表示]

コリーノ氏 産地などおかまいなしの、どこで作っても同じ味の特徴のないワインが市場にあふれています。ワイナリーで過剰なまでに加工し、宣伝だけを頼りにして売ることだけを考えているように思えます。この状況は、食品などにかぎらずほかのものにも言えることです。オマケを付けないと売れないような菓子が売られ、ありとあらゆるところでまがい物、偽物が横行しています。ただ、こういった状況があったからこそ、正真正銘、混じり気のないもの、そして自然に作られたものへの欲求が生まれてきました。我々の食生活においてもこういった食品を取ることの大切さについて考えが改められ、健康は食からということも言われ始めています。健やかな食生活と健全な社会性を保つこと。そういう生活をしていれば医者の世話にはならずに、元気で暮らしていけるのです。

コリーノさんは除草剤を使わないことを選択されていますが、それはブドウ生産者の健康や土壌の環境を守っていくことにつながっているのでしょうか?

コリーノ氏 そうです。除草剤などの農薬を使わないほうが質のいいブドウは栽培できます(*3)。それによって生産地の自然環境をより高めることができます。環境を高め、土壌の質を上げるのです。例えば、草を使って表土を覆うことがあります。それによって直射日光から土壌を守ることができます。同時に土中の水分を守ることにもつながります。それをすれば、灌漑(かんがい)の必要もなくなります。土中の微生物を増やすことにもつながり、有機物の増大にもつながります。表土が草で覆われていると浸食をもたらす豪雨からも守ることができるのです。そうすることによって土を豊かにすることにつながりますが、そのより良くなった土から生まれる作物の品質は当然上がります。それを食べることによって健康になるという考えです。同じことを野菜の栽培にも導入すれば同じことが可能なのです。いろんなことにも応用可能です。例えばオリーブ栽培にも可能ですし、果物、それをブドウ栽培にも応用可能です。非常に用途が広いと思います。

自身の畑「アッキーレ」でブドウを手に話すコリーノ氏。ここで作られたワインは、畑の名前から「アッキーレ(Achille)」と名付けられた。
*1 「自然派ワイン」「ビオワイン」と呼ばれるワインが多く流通するようになったが、生産者によってその定義はまちまちで、あえて言えば「できうるかぎり自然のままの製法で作られたワイン」というあいまいな表現にならざるを得ない。
*2 SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、2030年(2016年から2030年の15年間で達成を目指している)の達成に向けて世界各国が合意した「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のこと。「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」など世界が直面する課題17項目について解決を目指している。SDGsの「目標12」では持続可能な消費と生産のパターンを確保がテーマとなっており、土地の劣化、土壌肥沃度の低下、持続不可能な水利用などについて言及されている。また、「目標13」は気候変動とその影響についてで、二酸化炭素(CO2)排出量についてであり、「目標15」は「森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」である。SDGsの17項目の詳細は、こちら
*3 コリーノさんのワイン作りでは、草木を薬剤によって枯らす除草剤をはじめとする農薬類を使用していない。それだけではなく、ワイン醸造の過程でも添加物などを使用せず生産している。

土を大切にすることを祖先から学んだ

コリーノさんは、穀物学、醸造学などを専門とした研究者ですが、ご自身が研究された分野の経験からこういった結論に至ったのですね。

コリーノ氏 いいえ、これは自分の祖先から学んだことなのです。祖父と父が私の師匠です。自分の家族や家が「学校」でした。この家が自分を形成したのです。私はブドウ農家だった父から影響を受けています。どういう影響かというと、父は草を怖がってはいけない、畑に草が生えても何も問題はないということを教えてくれました。草が伸びてあまりにも背が高くなると多少刈り取ることはありましたが、根こそぎ抜いてしまうことはありませんでした。父は土地と植物について教えてくれたのです。土地を大切にすること、毎年収穫ができなくても心配しなくていいということも身をもって教えてくれました。土地など自然界のルールを私たちは分かっていないので、心配することは何もないんだと教えてくれました。そして、「我慢すること、希望を持つこと、待つこと」を教えてくれました。いつもちゃんとしていれば、待っているといいことがあると。父からはそういったことを学びました。

コリーノ氏の畑は草で覆われており、その下にある土が守られている。この草の層の下にやっと土が見えてくる(右)。
[画像のクリックで拡大表示]

人の手を加えなくても、表土を草などで覆えば、土を最高の状態にできるということですね。

コリーノ氏 その通りです。一番いい例が森です。森に行けば分かります。広葉樹の森、森の中の土が最高の質です。森の土を鉢植えに入れれば、肥料を使わなくても花がきれいに咲きます。森の土はあまりに良いので、イタリアの法律では森から土を持ってくることを禁止したくらいです。農業では草で土をカバーしておかねばなりません。除草剤で草を枯らして表土がむき出しになった畑が多いですが、土をカバーしていくことをもっとしていかねばならないのです。そうすれば土の質は上がっていきます。

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