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編集長インタビュー

ワインの本質とは? 人気生産者が語る「自然なワイン」の魅力

ロレンツォ・コリーノ氏「ワインの本質」を語る(1)

 寺西 芝=日経Gooday編集長

自身の「バルラ(Barla)」という畑の解説をするコリーノ氏。生物多様性を守るために、畑の周りの木を切らないで残している。畑では草はほとんど刈ることはせずに、いろいろな植物が雑多に生えている。これもコリーノ氏のこだわりだ。
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土がすべての原動力

なるほど、そうやって土壌を守るのですね。質の良い土がすべての基本という考えですね。

コリーノ氏 そうです。土がすべてのエンジン(原動力)です。エンジンなのでメンテナンスも必要です。メンテナンスをしてずっと働ける(動いていける)ようにしなくてはなりません。メンテナンスの一つが表面を草で覆うとか、麦わらをまくといったことです。雨が降った直後は非常にぬかるんだ状態ですが、そこで畑に入ってしまうと土が固まってしまうので入ってはいけない。そういったことも考えながら土を維持していくのです。土というのは無生命ではなく有機体、非常に複雑な有機体なので、人間同様にリスペクトして、大切にしなければなりません。土を上手に使わないと、いずれ何が問題かを土が教えることになります。自分たちの間違いをいずれ土が教えることになります。人間の歴史の中で、農業はいろんな間違いを犯してきました。ローマ時代からアフリカ北部では小麦栽培を広範囲に行うことで砂漠化をもたらした。これは歴史として残っています。ローマ時代でも「行き過ぎた農業」(*4)があったのです。それから2000年がたっていますが砂漠が残っています。資源の簒奪(収奪)による結果が今でも後を引いているわけです。あまりいい例ではないかもしれませんが、エンジンオイルを入れずに車を走らせるようなものです。いずれエンジンがだめになって車は壊れます。

過去からの財産を食いつぶしているということでしょうか?

コリーノ氏 そうです。土地というのは貴重な資金です。(農業生産のために)そこから少しずつ資金を取っていくだけで、まったく返していません。すべてを使い切ることではなくて、満足することを知らねばなりません。ある点を超えると後戻りできません。資金に例えると資金がなくなっている状態です。アメリカなどでもそういった状況が起こっています。行き過ぎた農業(*4)によって大変なことが起こっています。土壌がしっかりと守られていないので風が吹けば表土が飛ばされてしまい、種を蒔いてもそこに根付かないのです。これは全世界の問題です。ブドウやワイン農家だけではありあません。より資源を大切にした農業をしなければなりません。土の生産能力を考慮しながら生産しなければなりません。

*4 ここで言う「行き過ぎた農業」とは、自然環境を守らずに、土壌の豊かさを収奪し続けることを指す。後者のアメリカでの例では、植物の多様性を無視した単一栽培の行き過ぎた大規模化により本来の農業の姿をしていないことをコリーノ氏は憂慮している。「*2」でも解説したが、SDGsの目標15「森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」に通じる話だ。

自然環境が変わることで、ほかにはどんなことが起こっているのでしょうか。

コリーノ氏 たとえば、個々の野菜が持つ栄養価が下がっています。これは世界中で研究されていることです(*5)。本来食品が持つ重要な栄養素がどんどん下がってきているのです。例えばアミノ酸などの減少が顕著です。大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が上がり光合成しすぎて(糖が生成され)糖分だけが上がり、ほかの栄養価が下がっています。糖分は体にそれほど必要はありません。糖分を生成するのは簡単です。タンパク質や脂質を作り出すのが難しくなっています。長寿で有名なイタリアのサルデーニャ島などの例で、長寿の方々の食事を考えると、つまり彼らが何を食べているかを考えると答えはすぐに分かります。糖分の過剰摂取はしていないのは間違いありません。適正な量の食事、多くの野菜を食べること、海藻類を食べ、少しの魚とお米。われわれはこういった食事を壊してきました。この点に関しては考え直さねばなりません。エネルギーとしての糖分を多用しすぎています。

*5 土壌の劣化や大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇により、穀物や野菜などの栄養価が減っているという研究がある。一方で、それに対する反論の論文も出ている。

 次回は、ワイン作りについて伺います。

(まとめ:寺西 芝/通訳:川村武彦/インタビュー写真:稲垣純也)

※このインタビューは、コリーノ氏への独自取材と氏の著書『ワインの本質』の抜粋も含め独自に構成したものです。取材は2019年に行われました。

ロレンツォ・コリーノ(Lorenzo Corino)さん
ロレンツォ・コリーノ(Lorenzo Corino)さん 1947年、イタリア北部ピエモンテ出身。1972年農学部を卒業後、ローマの国立穀類試験場で研究者生活を開始。奨学金を得て英ケンブリッジのPlant Breeding Instituteにて穀類の遺伝耐性の研究プロジェクトに従事。イタリアに帰国後、国立穀類試験場、コーネリアーノヴェネトのブドウ栽培試験場アスティ研究所に入り1989年同所の所長に任命される。2008年5月から2009年10月バーリの地中海エリアぶどう研究所の所長を歴任。2009年12月からアスティ醸造学研究センターの所長を務め2012年末で退任。ブドウ栽培に関する学術書を約90冊執筆(一部共同執筆)。

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