流行はメディア情報で動く。はたしてこのワインブームは?
文=速水健朗
ワインブームも「ステイタス」から「健康」が主眼に
さて、ワイン。ワインが一般庶民のお酒になるのは1970年代以降のこと。輸入自由化の1970年が第1次ワインブームだ。その後、いく度かのワインブームが訪れる。代表的なところでは、ボジョレーが人気になったバブル期(87年頃)の第4次ワインブーム、さらには97年頃から始まったポリフェノールの健康効果による第6次となるワイン(赤)ブームなどがある。
ボジョレーブームの時代は、ワインを飲む生活とは、日本がやっと追いついた欧米の豊かさの実現でもあった。「あこがれ」「ステイタス」「背伸びした欧米的ライフスタイル」こうしたものがまだ当時のワインブームには詰まっていた。それが、第6次ブームのポリフェノールの健康効果が話題になったときは、「健康」に主眼が置かれるようになっていく。
「ステイタス」から「健康」へ。ブームの主眼は変化した。ホッピーの復活が「ビールの代用品」から「健康」へと主眼が移ったのと同じである。とにかく安く飲めればよかった時代から、最新型は「健康のため」になったのだ。酒類市場も、団塊世代、団塊ジュニア世代が「いい年」になってしまったこれから先は、「健康」という要素抜きには商売が成り立っていかなくなることは間違いない。
ワインの消費量は過去最大
現在は、第7次ワインブームの真っ最中。現在のワインの消費量は過去最大だという。だが、第4次、第6次のブームよりも大きなワインブームが来ているという実感は、実のところ薄い。確かに街にはワインバルや立ち飲みワインバーなど、ワインが楽しめる場所が増えている。だがブームと言えるほどだろうか? 確かに、値頃で美味いニューワールドのワインがたくさん入ってくるようになった。それが、せいぜいのブームの背景である。いや、おそらくワインは「ステイタス」でも「背伸び」でもなくなったことで日本人の生活に「定着」したのだ。そして、相変わらず健康目的でワインを飲み続けている人も多い。


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