日経グッデイ

Dr.キタカズの「意外に知らない!?くすりにまつわるエトセトラ」

雑誌が煽る「飲んではイケナイ薬」にだまされてはイケナイ!

「間違った使い方」が多いだけ

 北和也=やわらぎクリニック副院長

 皆さんこんにちは!

 前回、前々回のDU薬(DAITAI UNKO)の記事にはたいへん多くの反響をいただきました(「だいたいウンコになるので専門家に通称DU薬(DAITAI UNKO)とすら呼ばれる抗菌薬について知っておきたいこと」「同・続編」)。

 記事の内容を一言でいうと、「経口第三世代セフェムは飲んでほしくない!」ということです。

 「経口第三世代セフェムって、どんな時に飲んではいけないの?」と言われれば「どんなときも飲んでほしくないです」と答えることができます。

 でもこれって、実はものすごく例外的なことなんです。

「週刊〇〇を読んだら、△△という薬はダメだって…」

センセーショナルな見出しに踊らされないで。(©wabeno-123rf)

 医療の現場では、いついかなる時も飲んでほしくない・飲んではいけない薬なんて、そうそうありません

 最近、世の中は「減薬ブーム」のようで、「この薬は絶対飲んではイケナイ!」とか「医者が絶対飲まない薬」とか「この薬で私は死にかけた!」とか、とても極端な見出しがついた記事を雑誌やインターネットで見かけます。

 その影響もあり、実際に接する患者さんの中には

 「週刊〇〇という雑誌を読んだら、△△という薬はダメだって書いてあるんですけど、これ、私が飲んでいるやつですよね?」

 と心配そうに聞く方がおられます。中には、

 「××という薬は危険って書いてあったので、しばらく飲むのをやめていました」

 という方もおられるようです。そういう方にまずお伝えしたいのが、

 「雑誌の表現を真に受けて、自己判断で薬をやめることは非常に危険です!」

 ということです。こうした雑誌で紹介されている多くのケースは、薬を使うセッティング(状況)がよろしくないだけであり、薬そのものが害というわけではないのです。

 「かぜに抗菌薬」はおかしいけれど、「細菌性肺炎に抗菌薬」は通常必要ですし、「細菌性肺炎に抗菌薬を使わない」はかなりおかしいのです。

 雑誌に「ダメ」と書かれている薬の中には、テキトーに止めると非常に危険な薬もあります

 例えば、抗凝固薬という、血栓を作りにくくする薬があります。

 血が固まりにくくするということは、一方で、出血リスクを上げるというデメリットが付いてまわります。

 したがって、「何の病気もない人に抗凝固薬」はもちろんおかしいですが、たとえば「心房細動(放置すると脳梗塞を引き起こす可能性のある不整脈)で脳梗塞の既往を持つ、出血リスクの少ない75歳の男性に抗凝固薬」は、おかしいとは思いません。

 それぞれ個別の状況に応じて内服の必要性について論じられるべきところを、「あの薬はダメ」と一刀両断してしまうのは非常に危険なのです。

 そして、よくよく考えてみて下さい。

 薬をたくさん内服していても、健康に暮らしている方はたくさんおられます。多くの薬を内服しているからといって、必ず副作用を起こしているとは限りません。

 それにも関わらず、自己判断で急に中止してしまうと、命にかかわることもあり得るのです。

「たくさんの薬を使うこと=悪」ではない

 「薬漬け医療をなくそう」「無駄な薬を減らそう」というのは、最近の世間の流れであり、最近話題になっている「ポリファーマシー(多剤併用、必要以上に多くの薬を飲んでいる状態)」という言葉も少しずつ浸透しているように感じます。

 ただその半面、この言葉がやや一人歩きしているように感じることもあります。

 私を含めたポリファーマシー問題に取り組んでいる人たちの多くは、「減薬が全てである」なんて決して思っていません

 「個々の患者さんにフィットした、より良い処方っていったい何なんだろう?」という発想で、処方を整理しているに過ぎないのです。

 より良い処方内容を検討した結果、処方が増えることだってあるんです。

 「5剤以上だから絶対ダメ!」とか、「8剤だからあと4剤は減らそう!」という発想で取り組んでいるわけではないのです。

 よりフィットした薬を、と考えれば、自ずとメリットが乏しい・デメリットが多い薬は減らす方向に、メリットの多い・デメリットの少ない薬は増やす方向に働く。それだけのことなんです。

 (ただし、少々のメリットがあり、デメリットは少ない、という薬を多く処方されれば、トータルでデメリットが大きくなるということがあるので注意が必要です。もしかしたらご利益があるかも…という処方を医師が繰り返せば、その患者さんは世の中のたくさんの薬を飲んでしまうことになるかもしれません。)

 どうでしょう。

 これまでの記事と、一見矛盾することを言っているようですが、このタイミングでお伝えしたいと思った大事なことをつらつら書かせていただきました。

 薬=悪とか、ポリファーマシー=罪とか、そういった単純な問題ではないのです。みなさん、ぜひぜひ「自己判断での減薬」はやめましょう!

 …余談ですが、以前、ポリファーマシー関連の雑誌のインタビューを受けたときに、出来上がった記事が載った雑誌の表紙に「ひとりでできる減薬セラピー」みたいなタイトルが書いてあって、「そんなこと書いちゃうの…!?」と絶句したのを覚えています。

 以来、僕がしょうもないことをした時は、妻から「この減薬セラピストがー!」とおちょくられることもあります(笑…いや、笑えない)。

北和也
やわらぎクリニック副院長
北和也 2006年大阪医科大学卒。府中病院急病救急部、阪南市民病院総合診療科、奈良県立医科大学感染症センターなどで主に総合診療・救急医療・感染症診療に従事。手足腰診療のスキルアップのため、静岡県は西伊豆健育会病院 整形外科への3カ月間の短期研修(単身赴任)の経験もあり。
現在は、やわらぎクリニック(奈良県生駒郡)副院長として父親とともに地元医療に貢献すべく奮闘中。3姉妹の父親で趣味は家族旅行。
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