前回、「経口第三世代セフェムは飲まない方がいいのではないか?」というお話をさせていただきました(前回記事はこちら)。
理由をおさらいします。
- せっかく飲んでも吸収されずにDAITAI UNKOになる(DU薬と呼ぶ専門家もいる)
- よって、感染症を治すのは不得意な抗菌薬である
- それなのに腸内細菌が無駄に死んでしまい、危ない下痢を引き起こす場合がある
- 想定しうる全ての状況で、他に適切な医療(「様子をみるだけ」も含め)が存在する
- ということで、私や周りの医師は、経口第三世代セフェムを処方せずに診療している
というわけです。
「そんなの聞いたことがない! お前の周りの医師だけが特殊な医療をしているだけじゃないのか!?」と言う方もいるかもしれません。
確かにそう感じられても仕方がないのかもしれません。なぜなら、日本という国全体が、経口第三世代セフェムを大量に使用しているからです。
世界でも群を抜く日本の消費量
世界のセフェム系抗菌薬のマーケティング情報を見てみましょう。
- 第1位 ロセフィン(点滴の第三世代セフェム) 全売上の3.1%(年商3.2億ドル)
- 第2位 Zinnat(経口第二世代セフェム) 2.5%(2.6億ドル)
- 第3位 フロモックス(経口第三世代セフェム) 2.4%(2.5億ドル)
- 第4位 メイアクト(経口第三世代セフェム) 1.9%(2.0億ドル)
経口第三世代セフェムが世界のセフェム系抗菌薬の上位を占めていることがわかります。
「なんだ、日本だけじゃないじゃん! 世界中で売れているんじゃないか?」と思いたいところですが、そうではないのです。
実はこのフロモックスとメイアクトの売上のかなりの割合を、日本国内の売り上げが占めていることが予想されるのです。
2013年の日本国内の売上データでは、フロモックスが年商158億円、メイアクトが150億円でした。同じ年の売り上げの比較はではないものの、これらの薬の世界の売り上げの大部分を日本が占めていることは想像に難くありません(*2)。
どうですか、ちょっと変ですよね。もちろん、日本だけ特殊な細菌感染が蔓延しているわけではありません。
なので、Why Japanese people!な感じなのです。
*2 第15回 抗菌剤(その3)経口用・注射用セフェム系抗生物質, マーケティングシェア・シリーズ第41弾(2013年). 国際医療品情報 1031 : 60, 2015.
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