「女性化乳房」の犯人は、個人輸入したあの薬
Aさんが飲んでいた薬は、フィナステリドというAGA(男性型脱毛症)の治療薬で、日本では医師の処方せんがなくては購入できません。Aさんは、医療機関に行かずに、インターネットで個人輸入して飲んでいたんですね。
その副作用による女性化乳房で、両側のおっぱいが腫れていたのでした。
主治医にも家族にも、恥ずかしくてなかなか言い出せず、人知れず悩んでいたのでしょう。
Aさんに、「フィナステリドによる女性化乳房は、内服を中止すればリバーシブルである(元に戻る)」という報告(*3)があるという話をしたところ、安心されました。
が、毛髪への作用もリバーシブルであるとの説明を聞いて、がっかりされていました…。
みなさん、サプリメント、健康食品、個人輸入で購入したお薬なども意外な副作用を来すことがあるのでご注意下さいね。
これを医師に自己申告しないと、いろいろな検査をされ、時間もお金もすごくもったいないことになるかもしれませんから、ぜひきちんと伝えて下さい。
そして、医師・薬剤師の皆さん。特にプライバシーに関わることについては、患者さんはかなりつっこんで聞かないと教えてくれませんので、そこんとこ注意してくださいねっ!
たとえ乳が腫れたとしても…!

ちなみにこの方は「乳が腫れていても、ハゲよりはまし! 乳とともに生きていく!」とのことで、しばらくフィナステリドの内服を継続するとのことでした。
“医師として”は「危険だから止めて下さい」と言うのが良かったのかもしれませんが、“人として”はAさんの気持ちがとてもよく理解できたので、「医師としては勧められませんが、人としては大いに応援致しますので、ご自身の価値観のもとに判断下さい」とお伝えしました。
患者さんの健康は気になりますが、「おっぱいが出ていても、モテたいんや! 髪ボーボーのまま今の彼女とゴールインしたいんや!!」という気持ちまでを、われわれは否定できないのでありますっっ…うううっっ(←彼女とゴールインとかは筆者の妄想です)。
そういう意味では、医学的にはどうなんだろうという処方、飲んでいる薬が多すぎること、副作用など、医師が問題に思うようなことは、必ずしも絶対的な悪ではないのかもしれません。それらを許容して生きていく人がいても良いことを、この患者さんから教えていただきました。
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- リスクとベネフィットの天秤は人それぞれ