医師 『“かぜ”ですねぇ』
患者さん 『そうですか。いつも抗生物質を出してもらっているんで、今日も出しておいて下さい』
医師 『う~ん。“かぜ”ですし、抗生物質は要らないと思いますよ』
患者さん 『いや~××クリニックではいつも出してくれるんですよ! いつもそれで治っているんで、出しておいて下さい!』
医師 『要らないと思いますけどね~』
患者さん 『いや、絶対要るんです! だっていつもそれで治ってるんですから!』
医師 『…分かりました、腸内細菌のバランスが崩れることもありますから、あまりお勧めしませんよ』
患者さん 『大丈夫ですよ、お腹は強い方なんです!』
(数日後)
患者さん 『下痢しましたわ~』
医師 『そうですか~、大丈夫ですか?(…んもうっ、言わんこっちゃないっ!)』
患者さん 『今日は“お腹の風邪”だから、抗生物質くださいね!』
医師 『え! (全然懲りてないっっ!!)』
前々回(「クスリもリスク!?」)、かぜに対する安易な処方について物申させていただきましたが、今回はかぜに対する抗菌薬(抗生物質)についてのお話です。
まず、一般的なお話をさせていただきますね。
かぜのほとんどはウイルス感染症!
ご存じの方も多いと思いますが、かぜのほとんどは「ウイルス感染症」であり、「細菌感染症」ではありません!
ウイルスと細菌ってどっちも微生物ですが、同じじゃないんです。細菌感染には抗菌薬は効きますが、ウイルス感染には一切効きませんので、ほとんどのかぜには抗菌薬は効かないし、要らないのです!!
これって結構基本的なことだと思うのですが、知らない方も結構おられると思います。
実際、クリニックで患者さんに対して、“かぜ”についてのアンケートをとったことがありましたが、“かぜ”には抗菌薬が必要と思っている方が大多数でした。
ただ、興味深いことに、「かぜに抗菌薬は必要である」と思っている方々のうちの多くは、「もし抗菌薬は要らないと説明を受けて、実際に処方されなかった場合、不安に思いますか?」という質問に、「不安に思わない」と答えたんです。
要は、抗菌薬が欲しいのではなくて、安心できる説明が欲しかったわけなんですね。安心できる説明が足りないがために、その埋め合わせに抗菌薬を欲していたのかもしれません。
こんな世の中だから、みんな満たされたいんですよね。やっぱ「愛」ですよね…(しみじみ)。
さて、多くの方が抗菌薬に対し「愛」を求めていたことが分かったところで、1つの問題が勃発していることに気付くのです。
「そもそも“かぜ”ってなんやねん」と。
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