1日おきの「断食」ダイエットは本当に脂肪を減らす?
総カロリーが減らないと効果なし、身体活動が減ると筋肉も減少の恐れ
大西淳子=医学ジャーナリスト
断食をしても、減るのは総摂取エネルギーが減った分だけ
参加者には、試験開始前に4週間にわたって日常の食事の内容を記録してもらい、ウェアラブルな心電計兼3軸加速度計を使って身体活動量のモニターも行いました。その後、身体計測や血液検査を受けてから、1週間の休憩を経て、それぞれ12人ずつを0:200法、0:150法、75:75法のいずれかに無作為に割り付けて、3週間継続してもらいました。その間も食事の内容と身体活動量をモニターしました。1日のうちの、断食開始、または食事の開始のタイミングは、15時としました。
3群の間で比較したのは、DXAスキャンを用いて評価した体組成の変化、エネルギーバランス(エネルギー摂取量とエネルギー消費量の差)の変化、食後の代謝の変化などです。
分析の結果、1日おきの断食(0:200法および0:150法)による体重減少は、総摂取エネルギーが減った分を反映するにとどまりました。また、毎日の摂取エネルギーを減らした場合(75:75法)には、体重減少のほとんどが体脂肪量の減少によりもたらされていたのに対し、1日おきの断食の場合には、脂肪の減少量と、除脂肪体重(脂肪以外の体重)の減少量がほぼ等しいことが明らかになりました。除脂肪体重の減少は、筋肉量の減少を反映します。
それぞれの数字をもう少し詳しく見ていきましょう。毎日の摂取エネルギーを減らした75:75群では、3週間で体重が平均1.91kg減少しており、そのうち1.75kgは体脂肪量の減少によるものでした。
一方、0:150群でも体重は1.60kg減少しており、75:75群との差は有意ではありませんでしたが、体脂肪量の減少は0.74kgにとどまり、75:75群との差は有意でした。また、エネルギー制限なしで1日おきに断食した0:200群では、体重も体脂肪量も試験開始前に比べ有意に変化しておらず(減少せず)、0:150群、75:75群との差はいずれも有意でした。
試験開始前と試験期間中のエネルギー消費量を比較したところ、0:200群と75:75群には有意な変化は見られませんでしたが、0:150群では、試験期間中のエネルギー消費が介入前に比べ有意に少なくなっていました。また、身体活動による熱産生量の変化を調べたところ、0:150群では、介入期間中、軽度または中等度の動作が減少したために、熱産生量が有意に少なくなっていたことが明らかになりました。そうした熱産生量の低下は、断食日のみならず食事をした日にも認められました。他の2群には、介入前と比較した熱産生量の変化は見られませんでした。
試験前と試験中の、食後の代謝系の測定値を比較したところ、どのグループにおいても、血糖、インスリン、遊離脂肪酸、グリセロール、総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロールなど主要な測定値に変化は認められませんでした。
今回の3週間の介入で、1日おきの断食を行った0:150群と75:75群には同レベルの体重減少が見られました。しかし、0:150群では減少した体重に占める体脂肪量の割合は少なく、これは、身体活動が減少したためと考えられました。また、0:150法は、代謝調節または心血管系の健康に利益をもたらしていませんでした。しかし、長期にわたれば、筋肉量の減少を反映する除脂肪体重の減少が、有害な影響をもたらす可能性もあると考えられました。
以上の結果は、減量または健康利益を得るために1日おきの断食を行おうと考えるのであれば、平均のエネルギー摂取量をそれまでより減らし、エネルギー消費を維持するために身体活動の機会を意識して設ける必要があることを示しています。
論文は、「Science Translational Medicine」に2021年6月16日に掲載されています(*3)。
医学ジャーナリスト
