「温泉療法」は腰痛や変形性関節症の痛みの軽減に有効
水中運動を加えれば全身的な機能も向上する可能性
大西淳子=医学ジャーナリスト
天然温泉や鉱泉に浸かる「温泉療法」が、さまざまな病気の痛みの軽減や、患者の生活の質(QOL;Quality of Life)の改善に役立つことが、東京農業大学の上岡洋晴氏らの研究で明らかになりました。さらに、水中で運動すれば、身体的な機能が改善する可能性も示唆されました。

「温泉療法」の効果を調べた世界18件の研究を分析
温泉療法は世界的に広く行われており、その有効性について検討した研究の結果も数多く報告されています。今回、上岡氏らは、温泉療法の有効性について調べた無作為化試験の結果を集めて分析し、どのような患者にどのようなタイプの温泉療法が有効なのかを総合的に検討しました。
日本も含む世界の文献データベースに登録されていた文献の中から、2000年から2019年11月20日までの期間に発表された論文で、温泉療法を受けた患者と、それ以外の治療を受けた患者、または治療を行わなかった患者を比較した結果を報告していたものを探したところ、18件が条件を満たしました。
18件の研究が対象としていた患者の病気や症状は以下の通りです。
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筋骨格系および結合組織の病気(変形性関節症、関節炎、関節リウマチ、痛風、筋炎、血管障害、脊柱や脊椎の障害、骨の病気、軟骨の病気など): 8件(44%)
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循環器系の病気(リウマチ性心疾患、高血圧、虚血性心疾患、心筋症、その他の心疾患、肺塞栓症、脳出血、動静脈またはリンパ管の病気など):4件(22%)
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神経系の病気(神経系の炎症性疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、片頭痛、睡眠障害、神経障害など):1件(6%)
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他の病気に分類されない以下の症状、徴候および臨床所見・検査所見があるもの(心拍、呼吸、皮膚の異常、歩行の異常、消化器、泌尿器の異常、知覚、情緒、行動の異常、嗅覚、味覚の異常、言語の障害など):5件(28%)
温泉療法と類似する治療法の定義は、国によって、または研究によって異なっていたため、著者らは以下のように定義しました。
- 温泉療法(BT):天然温泉または鉱泉に浸かること。二酸化炭素や硫黄、ラドンなどの気体が添加された液体や治療泥などを用いる場合もBTに含まれる
- 水治療法(HT):水道水に浸かって水中運動などを行う(今回の分析では、水道水に浸かるだけの治療について検討していた研究は除外した)
- スパ療法(ST):HTやBTに加えて、マッサージや運動、理学療法、リハビリなどを行う。
今回の分析は、治療とリハビリを目的とするあらゆる種類のBTとST(水中運動あり/なし)を対象としました。