揚げ物好きはうつ病になりやすい?
日本の大企業で働く715人の調査結果
大西淳子=医学ジャーナリスト
日本人の食事が西欧化して、食べる機会が増えたものの1つが揚げ物ではないでしょうか。肉、魚にとどまらず、ジャガイモや野菜、スイーツまで、食材を揚げるレシピは日本食に比べ非常に多く、多様です。
誰しも、揚げ物は高カロリーと知りつつ、週に何回か、またはほぼ毎日食べているのが現状ですが、揚げ物を食べる頻度が高いと、抑うつに対するレジリエンス(*1)が低下し、うつ病になるリスクが高まる可能性が、日本医科大学多摩永山病院(所属は論文投稿時)の吉川栄省氏らの研究で示されました。
魚が多いとうつ病が減り、揚げ物が多いとうつ病が増える?

研究グループは、大企業で働く日本人を対象に、揚げ物の摂取頻度と、うつ病の有無、レジリエンスの高低の関係を調べました。
吉川氏らが揚げ物に注目したのはなぜでしょうか。そもそものきっかけは、魚の摂取頻度が高い集団ではうつ病患者は少ない、という報告と、日本食がうつ病のリスクを低減する可能性を示した複数の報告にありました。魚を食べる機会が多いのは、日本食の特徴の1つです。
一方で、西欧の食事がうつリスクの上昇に関係することを示した研究も複数あります。日本食との違いの1つが、西欧食には揚げ物メニューが多いことです。
魚は、長鎖n-3不飽和脂肪酸(LC n-3 PUFA;Long-chain n-3 polyunsaturated fatty acids)を多く含み、揚げ物には、長鎖n-6不飽和脂肪酸(LC n-6 PUFA)を含む植物油が使われることが多いのですが、これらPUFAは感情の調節に重要な役割を担っており、LC n-3 PUFAとLC n-6 PUFAの摂取量のバランスが崩れると、感情調節がうまくいかなくなって、うつ病をはじめとする精神疾患が起こりやすくなる可能性がある、と考えられています。(*2)
著者ら自身は先に、魚の摂取量が、抑うつに対するレジリエンスに関係することを明らかにしていました。そこで、揚げ物を頻繁に食べると、魚の場合とは反対に、レジリエンスが低下して抑うつ症状が現れやすくなるのではないかと考えて、その真偽を調べることにしました。
対象としたのは、都市部の大企業6社で働く715人(平均年齢39.9歳、83.4%が男性、65.2%が既婚者)です。
*2 長鎖n-3不飽和脂肪酸は「オメガ3脂肪酸」、長鎖n-6不飽和脂肪酸は「オメガ6脂肪酸」とも呼ばれる。
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