ベジタリアンには心疾患が少ないが脳卒中が多い
約3万人を対象とした英国の研究、出血性脳卒中のリスクは1.4倍
大西淳子=医学ジャーナリスト
肉や魚を食べず、野菜中心の食生活を送るベジタリアンは、肉も食べる人たちに比べ、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)のリスクが2割ほど低い一方で、脳卒中のリスクが高く、特に出血性脳卒中(脳出血、クモ膜下出血など)のリスクは4割以上高くなることが、英国で行われた研究で示されました。

ベジタリアンがなりやすい病気、なりにくい病気はあるのか?
近年、ベジタリアン(菜食主義者)が世界的に増加しています。理由の一つは、健康利益が期待されることにありますが、動物福祉や環境保護を目的としてベジタリアンになる人も増えています。
既に、ベジタリアンと非ベジタリアンでは、特定の疾患を発症するリスクが異なることが示唆されていますが、食習慣がその後の循環器疾患の発症に及ぼす影響について検討する大規模な研究はほとんど行われていませんでした。
そこで、英Oxford大学のTammy Y N Tong氏らは、虚血性心疾患と脳卒中に焦点を絞って、食習慣が発症に及ぼす影響を明らかにしようと考えました。
- 虚血性心疾患
- ―心筋梗塞、狭心症など
- 脳卒中
- ―虚血性脳卒中(脳梗塞など)
- ―出血性脳卒中(脳出血、クモ膜下出血など)
分析対象にしたのは、「EPIC-Oxfordスタディ」と呼ばれる観察研究に参加した英国の成人です。EPIC-Oxfordは、1993年から2001年までに、英国全体でおおよそ6万5000人の男女を登録して行われました。
虚血性心疾患や脳卒中の病歴がなかった4万8188人を、ベースラインで収集した食物摂取に関する情報に基づいて、以下の3群に分けました。
(1)
肉を食べる人(魚や卵、乳製品を食べるかどうかは問わない):2万4428人
(2)
魚を食べる人(肉は食べないが、魚は食べる):7506人
(3)
ベジタリアン(肉と魚は食べないが、卵と乳製品のいずれか〔または両方〕は食べる):1万6254人。ヴィーガン(肉、魚、卵、乳製品を全て食べない人/1832人)を含む。
2010年から2013年にかけて上記の人々に再調査に応じるよう依頼したところ、2万8364人が応じました。それらの人々に、食習慣に変化があったかどうかを尋ねたところ、ベースラインで肉を食べていた人の96%、魚を食べていた人の57%、ベジタリアンだった人の73%は、そのままの食生活を続けていました。
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