ベジタリアンには心疾患が少ないが脳卒中が多い
約3万人を対象とした英国の研究、出血性脳卒中のリスクは1.4倍
大西淳子=医学ジャーナリスト
3群の人々を2016年3月31日まで追跡し、必要な情報が得られた20歳から90歳までの2万8364人を分析対象にしました。18.1年間の追跡期間中に、4万8188人中2820人が虚血性心疾患を発症、うち788人が急性心筋梗塞と診断されていました。また、1072人が脳卒中を発症、うち519人は虚血性脳卒中、300人が出血性脳卒中と診断されていました。
学歴などの社会人口学的特性、喫煙歴などのライフタイル要因を考慮した上で、肉を食べる人を参照群として、魚を食べる人とベジタリアンの虚血性心疾患や脳卒中のリスクを推定しました(表1)。
虚血性心疾患のリスクは、肉を食べる人に比べ、魚を食べる人では13%低く、ベジタリアンでは22%低くなっていました。一方、脳卒中のリスクは、ベジタリアンで20%上昇し、特に出血性脳卒中が多く発生していました(43%上昇)。魚を食べる人では脳卒中のリスクに変化はありませんでした。
ベジタリアンとヴィーガンを分けて分析すると、ヴィーガンでは、どの疾患についても、肉を食べる人と比較したリスク上昇または低下は見られませんでしたが、著者らは、「分析対象とした人数が少なかったことが原因かもしれない」と述べています。
今回の研究では、魚を食べる人とベジタリアンの虚血性心疾患のリスクは、肉を食べる人より低いこと、一方で、ベジタリアンでは、出血性脳卒中とあらゆる脳卒中のリスクが高いことが示唆されました。
研究者たちは「今後、別の集団を対象に、今回の研究の結果を確認すると共に、リスクに差をもたらしている可能性のある、LDL-コレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)や中性脂肪といった血中脂質の値や、ビタミンB12、脂肪酸などの摂取量を調べて、そうした疾患のリスクに影響を及ぼしているかどうかを検討する必要がある」と述べています。
論文は、2019年9月4日付のBMJ誌電子版に掲載されています(*1)。
医学ジャーナリスト
