改善すれば認知症を35%減らせる可能性のある「9つの危険因子」とは
英国の医学雑誌「Lancet」がまとめる
大西淳子=医学ジャーナリスト
認知症の発症リスクを高める様々な危険因子のうち、本人が意図すれば改善可能な9つの危険因子を、英国の医学雑誌「Lancet」の認知症予防・介入・ケアに関する国際委員会がまとめ、同誌に発表しました。
中年期に聴力低下がある人は認知症リスクが2倍

2015年の全世界の認知症患者は4700万人で、2050年までにその数は約3倍に増えると予想されています。現時点では、認知症を治癒に導くことができる治療法はありません。認知症を発症するリスクは年齢が上昇するにつれて高まりますが、ライフスタイルを改善すれば、リスク低減は可能であることが、近年分かってきました。
そこで、「Lancet」の認知症予防・介入・ケアに関する国際委員会は、認知症の危険因子に関するデータを収集し、それらの中から、「本人が意図すれば改善できる認知症の危険因子」を9つ抽出しました。さらに、それらを適切に修正すれば、社会全体として、どの程度認知症患者を減らせるのかを推定しました。
同委員会が認知症のリスク低減において重要と見なしたのは、「11~12歳までに教育が終了」、「高血圧」、「肥満」、「聴力低下」、「喫煙」、「抑うつ」、「運動不足」、「社会的孤立」、「糖尿病」の9つの危険因子です。人生のどの時期に修正する必要があるのかに基づいて、小児期、中年期、高年期に分けて、相対リスクと人口寄与割合(その危険因子を持つ人がいなくなったら、認知症患者が何%減少するかを表す数字)とともに提示しました(次ページ表)。