小学生のテレビゲーム、短時間なら利益あり?
週に9時間以上だと行為障害のリスクを高める可能性
大西淳子=医学ジャーナリスト
週に1時間以上テレビゲームをする子どもは、視覚刺激に対する反応速度が早いなど、好ましい傾向が見られることが、スペインで行われた研究で明らかになりました。ただし同時に、週に9時間以上プレーした子どもには行為障害(攻撃的・反社会的行動を繰り返し起こすこと)が多く見られ、ゲームのプレー時間が脳の構造的な発達にも影響を及ぼす可能性も指摘されています。論文は、「Annals of Neurology」誌9月号に掲載されました(*1)。
バルセロナの7~11歳の2442人のゲーム習慣を調査

子どもに対するテレビゲームの功罪については盛んな議論が行われてきましたが、ゲームをすることの利益とリスクは明確になっていません。最適なプレー時間がどの程度なのかも不明です。
これまでに行われた研究では、ゲームが子どもの認知能力を高める可能性を示したものもあれば、ゲームが行為障害や依存症のリスクを高めることを示したものもありました。親としては、テレビゲームの利益とリスクのバランスを知りたいものです。
今回、スペインのHospital del MarのJesus Pujol氏らは、小学生を対象に、テレビゲームをする時間が、運動や認知の機能と行動に及ぼす影響と、脳の構造的発達に与える影響を調べました。
研究の対象者は、バルセロナ市内の小学校39校に通う7~11歳の子どもの中から選びました。運動と認知の機能に関する検査を受け、親が、子どものテレビゲーム習慣に関する質問と、行動に関する調査に回答していた2442人(平均年齢8.6歳、1223人が男児)を分析しました。なお、週に18時間以上ゲームをしていた子どもはあらかじめ除外してあります。
2442人のうち2014人は、1週間に1時間以上ゲームをしており(プレーヤー群としました)、428人はゲームを全くしないか、しても週に1時間未満(非プレーヤー群)でした。プレ-ヤー群の1週間の平均プレー時間は4時間で、男児は女児に比べ、週平均で1.7時間長くゲームをしていました。なお、ゲームをする子としない子の親の学歴には差はありませんでした。
実際に利用していたゲームのタイトルは、100家族を選んで詳しく尋ねました(下表)。
(最大3タイトルまで回答)
ゲームの種類 | プレー世帯(%) |
● 視覚運動スキルを利用するゲーム | 78 |
プラットフォームゲーム | |
・マリオブラザーズ/スーパーマリオブラザーズなど マリオ系 | 46 |
・ドンキーコング | 12 |
スポーツシミュレーションゲーム | |
・FIFA | 33 |
・ウイニングイレブン欧州版 | 8 |
・イナズマイレブン | 8 |
・NBA | 4 |
ドライブシミュレーションゲーム | |
・マリオカート | 7 |
・フォーミュラワン | 3 |
・グランツーリスモ | 2 |
シューティングゲーム | |
・コールオブデューティ | 2 |
格闘ゲーム | |
・ドラゴンボール | 2 |
アクションアドベンチャーゲーム | |
・レゴシティ | 5 |
・グランドセフトオート | 3 |
● 全身運動ゲーム・エクサゲーム | 58 |
・Wiiスポーツ | 48 |
・ジャストダンス | 20 |
・マリオパーティ | 17 |
・Wiiパーティ | 4 |
● アドベンチャーゲーム・ストラテジーゲーム | 49 |
・動物の森欧州版 | 12 |
・ポケットモンスター | 11 |
・Petz Dogz/Petz Horsez | 4 |
・その他 | 12 |
視覚運動スキルを利用するゲーム・全身運動を要するゲームのいずれかまたは両方をプレー | 96 |
アドベンチャーゲーム・ストラテジーゲームのみをプレー | 4 |
*1 Pujol J, et al. Video gaming in school children: How much is enough?. Ann Neurol. 2016 Sep;80(3):424-33. doi: 10.1002/ana.24745. Epub 2016 Aug 22.
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