日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > 医療・予防  > 話題の論文 拾い読み!  > HPVワクチン、子宮頸がんリスク63%減 世界初のエビデンス  > 3ページ目
印刷

話題の論文 拾い読み!

HPVワクチン、子宮頸がんリスク63%減 世界初のエビデンス

男性の接種もがんリスクの低減に役立つ

 大西淳子=医学ジャーナリスト

ワクチンと接種後の慢性的な疲労や痛みは無関係とする報告も

 HPVワクチンの安全性に関する懸念が接種率の上昇を妨げている国は、日本以外にもあります。そうした国の1つがデンマークです。そのデンマークから最近、4価HPVワクチンの接種と、接種後に見られた慢性疲労や長期間持続する痛みとの間に因果関係はないとする研究結果が英国のBMJ誌に発表されました(*3)。

 報告を行ったのは、デンマークのStatens Serum InstitutのAnders Hviid氏らです。同氏らは、デンマーク国民の医療記録データベースなどから、2007年から2016年の期間に10歳から44歳だったデンマーク生まれの女性137万5737人の情報を収集し、HPVワクチン接種後に発症する可能性があると考えられている、自律神経障害を特徴とする疾患(慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、体位性頻脈症候群)と、4価のHPVワクチンの関係を検討しました。

 追跡期間中にこれら3つの疾患のいずれかの診断を受けた女性は869人(10万人・年当たりの発症率は8.21)でした。ワクチン接種後1年以内の「リスク期間」における発症率と、それ以外の期間の発症率を比較したところ、「リスク期間」における有意な増加は見られませんでした(発症率比は0.99)。著者らは、「4価HPVワクチンの接種と、自律神経障害に関連する疾患の間に因果関係があるという仮説を支持するデータは得られず、接種後に自律神経障害関連の疾患を発症したとしても、全くの偶然によると見なされる」と結論しています。

全世界の子宮頸がん死亡を99%減らすためのWHOの計画

 HPVワクチンにはリスクを大きく上回る利益があると確信しているWHO(世界保健機関)は、低所得国と低中所得国を対象として、HPVワクチンを重要な柱の一つに据えた子宮頸がん撲滅プログラムを推進しています。WHOが目指すのは「90-70-90トリプル介入戦略」と銘打ったプログラムの普及で、HPVワクチンの接種率を90%まで上昇させ、生涯に2度(35歳時点と45歳時点)子宮頸がん検診を受ける女性の割合を70%まで高め、前がん状態以上の患者の90%に適切な治療を実施する、というものです。

 このプログラムを推進すれば、今後10年間に、対象国における子宮頸がんによる死亡率は3分の1に減少し、目標が達成できれば、2120年までに78の低所得国と低中所得国における子宮頸がん死亡率は99%低下し、6200万人の女性の命が救えると推定されています(*4)。

 日本は高所得国に分類され、子宮頸がん治療のレベルは世界有数といえるでしょう。しかし、子宮頸がん検診を受ける女性の割合は、先進国の中では低く、50%未満です。さらに、HPVワクチンの接種率は1%に満たない状態が続いています。この状態が続けば、近い将来、日本の子宮頸がん死亡率が、WHOの強力な支援を受ける低所得国と低中所得国よりも高いことに驚く日が来るかもしれません。

男性にもHPVワクチンは利益をもたらす

 HPVワクチンは、女性だけのワクチンではありません。HPVは子宮頸がんだけでなく、中咽頭がん肛門がん陰茎がんなど、男女問わず様々ながんの原因になるため、米国やオーストラリアなどでは、男性へのワクチン接種も推奨しています。男性がHPVワクチンを接種すれば、自分のがんリスクを減らせると共に、パートナーが将来がんになるリスクも減らすことができます。

 残念ながら日本では、男性と、高校2年生以上の女性がHPVワクチンの接種を受けようと思えば、定期接種の対象外であるため自費になってしまいます。価格は、3回接種で約5万円です。

がん
キーワード一覧へ

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 痛風だけじゃない!「高すぎる尿酸値」のリスク

    尿酸値と関係する病気といえば「痛風」を思い浮かべる人が多いだろう。だが、近年の研究から、尿酸値の高い状態が続くことは、痛風だけでなく、様々な疾患の原因となることが明らかになってきた。尿酸値が高くても何の自覚症状もないため放置している人が多いが、放置は厳禁だ。本記事では、最新研究から見えてきた「高尿酸血症を放置するリスク」と、すぐに実践したい尿酸対策をまとめる。

  • 早期発見、早期治療で治す「大腸がん」 適切な検査の受け方は?

    日本人のがんの中で、いまや罹患率1位となっている「大腸がん」。年間5万人以上が亡くなり、死亡率も肺がんに次いで高い。だがこのがんは、早期発見すれば治りやすいという特徴も持つ。本記事では、大腸がんの特徴や、早期発見のための検査の受け方、かかるリスクを下げる日常生活の心得などをまとめていく。

  • 放置は厳禁! 「脂肪肝」解消のコツ

    人間ドック受診者の3割以上が肝機能障害を指摘されるが、肝臓は「沈黙の臓器」だけあって、数値がちょっと悪くなったくらいでは症状は現れない。「とりあえず今は大丈夫だから…」と放置している人も多いかもしれないが、甘く見てはいけない。肝機能障害の主たる原因である「脂肪肝」は、悪性のタイプでは肝臓に炎症が起こり、肝臓の細胞が破壊され、やがて肝硬変や肝がんへと進んでいく。誰もが正しく知っておくべき「脂肪肝の新常識」をまとめた。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2021 Nikkei Inc. All rights reserved.