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話題の論文 拾い読み!

HPVワクチン、子宮頸がんリスク63%減 世界初のエビデンス

男性の接種もがんリスクの低減に役立つ

 大西淳子=医学ジャーナリスト

予防の要はHPVワクチン

 子宮頸がんの95%以上は、HPVに感染しなければ防ぐことができます。残念ながら、コンドームでは感染を完全に防ぐことはできません。一番確実な予防策は「生涯にわたって性交渉をしないこと」になりますが、これを徹底したら人類は滅びてしまいます。そこで導入された予防策が、HPVワクチンの接種です。2006年に欧米で発売され、それ以降、世界的に広く接種されているHPVワクチンは、高リスク型のHPV16型、18型と、良性の尖圭コンジローマの原因となる6型、11型の4つの型に対する免疫がつく「4価HPVワクチン」です。このほか、9価のHPVワクチンが、米国では2014年に、欧州では2015年に承認され、その後世界の多くの国で接種されるようになっています(日本では2020年7月に承認を得ていますが、10月20日時点で未発売)。

 尖圭コンジローマは、HPVの感染によって性器の周辺に良性のイボが生じる疾患で、やはり性交渉によって感染します。自然治癒する場合もありますが、薬物療法、凍結療法、外科的治療が必要になる場合もあります。

 HPVワクチンを接種すると、ワクチンが対象としている型のHPVの新たな感染と、これによる性器のイボと子宮頸部の前がん病変の発生が予防されることは、これまでに示されていました。しかし、上述したように、子宮頸がんは、高リスク型のHPVに感染した後、発症するまでに数年から数十年かかるため、HPVワクチンの接種者と非接種者の子宮頸がん発症リスクに有意な差が見られるようになるまでには、相当な観察期間を必要とします。そのため、HPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果を示した研究結果はこれまで報告されていませんでした。

HPVワクチンは子宮頸がんのリスクを63%減らした

 今回、HPVワクチンの接種が子宮頸がんの発症率の低下と関係することを初めて示したのは、スウェーデンKarolinska研究所のJiayao Lei氏らの研究グループです(*2)。著者らは、スウェーデンの人口統計と保健に関する全国規模の登録を用いて、2006年から2017年に10歳から30歳だった女性167万2983人を追跡し、子宮頸がんの発症率と4価HPVワクチンの接種との関係を検討しました。子宮頸がんの発症率は、HPVワクチンを接種していた群、接種していなかった群のいずれにおいても、23歳以降に急上昇していました。

 結果に影響を及ぼすと考えられる様々な要因を考慮した上で分析したところ、ワクチンを接種していなかった群に比べ、ワクチンを接種していた群では、30歳までの子宮頸がん発症リスクが63%低くなっていまいた。ワクチンを接種した年齢別にみると、17歳未満で初回の接種を受けた女性では子宮頸がん発症リスクは88%低く、17~30歳で接種を受けた女性では53%低下していました。

 日本では、HPVワクチンを無料で受けられるのは高校1年生の終わりまでとなっており、17歳になる前に3回の接種が完了するため、接種者は、上記の論文で示された、最大の利益を得られることになります。

日本のHPVワクチン接種率は極めて低い

 現在日本では、2価または4価のHPVワクチンが定期接種に組み込まれているものの、接種率は極めて低い水準にとどまっています。2018年の国内での接種状況を見ると、3回の接種を完了していたのは、接種対象となる年齢の女性のうちの0.8%でした。

 日本におけるHPVワクチンの定期接種は、小学校6年生から高校1年生相当までの女子を対象に、2013年4月に始まりました。しかし、そのわずか2カ月半後に、厚生労働省は「積極的な接種勧奨の差し控え」を決定しました。一部の接種者に、ワクチンとの因果関係が否定できない持続的な痛みなどがみられ、接種対象者や保護者などの間で不安が広がったためです。以降、日本では、接種者に現れた症状とワクチンとの因果関係は明らかにならないまま、HPVワクチンは、「定期接種に指定されていながら、積極的な接種の呼びかけはほぼ行われない」という状況が続いています。

 一方で、世界の状況を見ると、2019年12月の時点で124の国と地域が、HPVワクチンを国民のための予防接種プログラム(日本における定期接種と同様の扱い)に組み入れています。HPVワクチンが世界で初めて承認を獲得した日以来、2億7000万回分のワクチンが世界各国に向けて出荷されました。これは、世界では、HPVワクチンの利益はリスクを大きく上回ると広く見なされていることを意味します。

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