緑黄色野菜に含まれるカロテノイドは死亡リスク低下に関係
血中の総カロテノイド値が25%上昇するごとに、総死亡リスクは15%低下
大西淳子=医学ジャーナリスト
総カロテノイド値が25%上昇するごとに、総死亡は15%低下
性別と年齢、喫煙歴、飲酒習慣、血圧、BMI(体格指数)などを考慮して、個々のカロテノイド値と総死亡の関係を分析した結果、上述したカロテノイドのうち、カンタキサンチンを除くすべてと、総カロテン、総キサントフィル、プロビタミンA、そして総カロテノイドの濃度が上昇すると、総死亡リスクが有意に低くなることが明らかになりました。がん死亡、心血管疾患死亡のリスクも同様でした。総カロテノイド値が25%上昇するごとに、総死亡リスクは15%低下し、がん死亡リスクは18%低下し、心血管死亡リスクは14%低下していました。
研究開始時点の測定値のみを用いて分析しても、総カロテノイド値が25%上昇あたりの死亡リスクの低下は、いずれも統計学的に有意になりました。しかし、総死亡リスクは8%、がん死亡リスクは13%、心血管疾患死亡のリスクは7%低下となり、リスク低下幅は小さい傾向が見られました。
複数回測定された血清カロテノイド値が高いことは、おおよそ25年間の追跡期間中の総死亡と、がん死亡、心血管死亡のリスクが低いことに関係していました。著者らによると、幸いなことに、血清カロテノイド値を25%上昇させる緑黄色野菜や果物の摂取は、比較的容易にできそうです(下記参照)。
この研究において、血清カロテノイドの25%上昇あたりのリスクを評価した理由を、著者らは、β-カロテンを例として、以下のように説明しています。
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対象となった人々が研究への参加を決めた時点の血清β-カロテンの中央値は447.75 µg/Lでした。ここから25%上昇したとすると、血清β-カロテン値は、111.94 µg/L 増えて、559.69 µg/Lになります。
皮をむいたニンジンが100gある場合、β-カロテンの含有量は7200 µgです。刻んだ生ニンジンを食べた場合に、β-カロテンが血液中に移行する割合を示す生体利用率は、41.4%と報告されていることから、皮をむいた生ニンジン100gを食べたとすると、血中に移行するβ-カロテンは2981 µgになります。成人の循環血液量は一般に5Lであることから、摂取後に血液検査を行えば、ニンジン由来のβ-カロテンは、596.16 µg/Lという数値になるはずです。
これは、対象となった人々における血清カロテノイドの25%上昇分に相当する111.94 µg/Lと比べると、5倍以上になります。したがって、カロテノイドの摂取を25%増やすことはさほど難しくないと考えられます。
論文は、2021年6月11日付のJAMA Network Open誌電子版に掲載されています(*1)。
医学ジャーナリスト
